【記事41940】社説 熊本の被害拡大 容赦なき大自然の脅威(毎日新聞2016年4月17日)
 
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社説 熊本の被害拡大 容赦なき大自然の脅威


 日本列島では、いつどこで大きな地震が起きてもおかしくない。そして、私たちは地震の発生メカニズムをまだよく分かっていない。そんな現実を再認識させられた。

 16日未明に熊本県の熊本地方を震源とするマグニチュード(M)7・3の地震が発生した。1995年の阪神大震災と同規模だ。14日夜の地震に比べると規模は約16倍で、こちらが「本震」だという。

 14日より広い範囲で強い揺れに襲われた。国道の橋の崩落などインフラ被害が拡大し、犠牲者も一気に増える痛ましい事態となった。

 気象庁は「本震」の発生を想定していなかった。被害に追い打ちをかける大自然の容赦ない脅威を、感じざるを得ない。

 「本震」の震源は14日の震源のやや北側にある。その後も、北東側の熊本県阿蘇地方と大分県で最大震度5弱から6強を観測する地震が相次いだ。気象庁は、このように広域的に地震が続けて発生したケースは、「近代観測が始まって以降は思い浮かばない」という。

 これら3地域は、九州の中でも地殻変動の影響でひずみが蓄積しやすい地質構造の「別府-島原地溝帯」周辺に位置する。地溝帯の延長線上には伊方原発(愛媛県)がある。稼働中の川内原発(鹿児島県)とあわせ、改めて原発の地震対策が懸念される。

 「本震」後には、熊本県の阿蘇山で小規模な噴火も起きた。今後の活動を注視したい。

 今回の地震は「本震」「前震」ともに震源が約10キロと浅く、揺れが弱まらないまま地表に伝わった。その結果、多数の建物が倒壊し、山間部では土砂崩れで道路が寸断されている。熊本県南阿蘇村では多くの住民が孤立状態になっている。

 政府は地震被害の拡大を受けて、自衛隊員や警察、消防の派遣を増強した。関係機関は、被害の全容を速やかに把握し、被災者の救援と避難先の確保に全力をあげてほしい。度重なる揺れで、今後も地盤の緩みや建物の傷みが広がる恐れがある。2次災害への配慮も欠かせない。

 水道や電気、高速道路などライフラインの被害も大きく、復旧には相当の時間がかかるだろう。長期的な視点で、被災者への支援や配慮が必要だ。

 熊本県宇土市役所は倒壊の恐れがあり、立ち入り禁止になった。緊急時の対策拠点や避難所となるべき施設が機能しなくては支障が大きい。

 南海トラフ巨大地震や首都直下地震が30年以内に発生する確率はいずれも70%程度とされる。建物の耐震化や防火対策など平時の備えが重要だ。これは、日本列島で暮らす上での宿命である。

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