【記事41860】大きな視点から見れば中央構造線上に起きた連動地震だと思います 原発がMj7クラスの地震が連発するようなケースを想定さえしていないのはもはや許されない 山崎久隆(たんぽぽ舎)(たんぽぽ舎メルマガ2016年4月16日)
 
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大きな視点から見れば中央構造線上に起きた連動地震だと思います 原発がMj7クラスの地震が連発するようなケースを想定さえしていないのはもはや許されない 山崎久隆(たんぽぽ舎)

 この文章は、たんぽぽ舎メールマガジン【TMM:No2759】(4月16日発信)の★3.『原発は今すぐ止めるべきです 福岡高裁宮崎支部の「川内原発運転差止仮処分の却下」は完全に間違った決定であることを自然が立証している』の続きです。

 今回のMj7.3(Mw7.0)2016熊本地震の発生で、現代の地震学の知見は、まだまだ新しいことの連続であることがわかりました。
 三成分合成で「益城」の地震動は1362ガルを観測しています。計測震度がわずかに低く出たので、先の地震では震度7と発表され、こちらが震度6強と発表され、逆転しているかのように見えますが、やはり単に震源断層面から近いか遠いか程度の違いで、今回の地震のほうが遙かに広い範囲で強震動を記録していますし、振動継続時間も長くなっています。
 防災科研の強震計記録は川内原発の危険性を強く警告する内容であると思います。70kmも離れている湯布院で三成分合成値723ガルを記録しています。

防災科学技術研究所 最大加速度リスト
地震発生時刻 2016/04/16-01:25:00.00
震央北緯 32.8°
震央東経 130.8°
震源深さ 10.0km
マグニチュード M7.1

観測点名 緯度 経度 最大加速度(ガル) 三成分合成値 計測震度
   北緯 東経 南-北 東-西 上-下 (ガル)
 益城 32.797 130.820 653 1157 873 1362   6.4
 熊本 32.793 130.777 827 616 534 843   6.0
 矢部 32.686 130.986 777 640 187 831    5.7
 菊池 32.998 130.830 787 228 403 800    6.1
 砥用 32.617 130.865 598 602 255 778    5.6
 湯布院 33.257 131.344 528 717 475 723    6.0
 小国 33.122 131.063 303 660 286 687    5.5
 大津 32.876 130.877 526 482 397 669    5.7
 豊野 32.635 130.752 457 402 539 612    5.7
 九重 33.284 131.212 559 519 272 598    5.5

 この地震は、もう一つの「社会通念」を打ち破った地震のように思われます。
 違う断層上での動きが、連続的に1日程度の時間をおいて起こること、それが目の前で起きました。
 始めは日奈久(ひなぐ)断層帯の地震が起き、余震域が南下していたさなかに、さらに布田川(ふたがわ)断層帯の地震が発生し、その地震が前の地震を凌駕し、これが本震と呼ばれ、その後に阿蘇山の北側に誘発地震を起こし、その後に最初の地震から100kmも離れた大分県の別府−万年山(はねやま)断層帯にも「飛んで」地震が誘発されたと考えられます。
 別府−万年山(はねやま)断層帯も中央構造線に含まれる断層ですから、大きな視点から見れば中央構造線上に起きた連動地震であると思います。そのまま中央構造線上で「飛ぶ」と、伊方原発の目の前で巨大地震が起きる可能性が飛躍的に高まってきます。
 このような誘発地震は、近代地震観測史上は経験がないと思いますが、そんな地震の起こり方は過去の歴史ではいくらもあったことだと思います。古い地震を正確に知ることが出来ないので、初めて見るような地震になるのです。
 連動型地震の危険性も「社会通念上無視し得る」などとされてきたと思います。
 むしろ連動型を想定しないことが、最新の科学的知見を無視した暴論というべき時代に来ていると思います。
 日奈久(ひなぐ)断層帯の南にあるのは川内原発なので、この断層帯の活動が今後も続き、出水(いずみ)断層や甑(こしき)断層帯や市来(いちき)断層帯を動かす地震につながっていく危険性は考える必要があるはずですし、原発が今回のようにMj7クラスの地震が連発するようなケースを想定さえしていないのは、もはや許されないことだと思います。

※事故情報編集部より
 この文章は4月16日20時過ぎに届いたものです。

※補足「2つのマグニチュード(MwとMj)について」…4/18 山崎久隆

 Mwはモーメントマグニチュードで、震源断層面の断層の面積と断層すべり量の積を計算して地震のエネルギーを求める。
 Mjは気象庁マグニチュードで、地震波の測定データに基づきエネルギーを計算する。速報に向くのが気象庁マグニチュードで、モーメントマグニチュードは計算に時間が掛かる場合がある。小さな地震では計算できないなどの欠点がある。
 一方、大きな地震では気象庁マグニチュードでは値が飽和してしまうためモーメントマグニチュードで表すことがある。
 陸域の比較的浅い地震は気象庁マグニチュードで、プレート境界型の巨大地震はモーメントマグニチュードで表すことが多い。
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