[2011_05_01_01]東北地方太平洋沖地震およびその後に発生した津波に関する 女川原子力発電所の状況について(東北電力2011年5月1日)
 
参照元
東北地方太平洋沖地震およびその後に発生した津波に関する 女川原子力発電所の状況について

 04:00
(前略)
1. 概要

 女川原子力発電所は、1号機および3号機が定格熱出力一定運転中、また、2号機が原子炉起動中のところ、3月11日14時46分に発生した東北地方太平洋沖地震(以下、「3.11地震」という。)により全号機において原子炉が自動停止した。観測された地震加速度は567.5ガル(保安確認用地震計:1号機原子炉建屋地下2階)であり、全号機とも、原子炉保護系が設計どおり作動したことにより自動停止したものである。

 女川原子力発電所に外部電源を供給する5回線のうち、1回線が健全であったことおよび原子炉を安全に停止・冷却するために必要な機能は確保されていたことから、全号機とも原子炉自動停止後の炉心冷却は問題なく行われ、速やかに冷温停止となった。

 また、地震の揺れによる影響で、全号機とも使用済み燃料プール冷却系(以下、「FPC」という。)が自動停止したが、設備に異常がないことを確認したうえで再起動しており、使用済み燃料プール温度に有意な上昇は認められなかった。

 1 号機では、常用系の高圧電源盤(以下、「メタクラ」という。)で短絡・地絡による火災が発生するとともに、起動用変圧器が停止した。このため、所内電源が瞬間的になくなったが、非常用ディーゼル発電機(以下、「DG」という。)が正常に動作し、起動用変圧器復旧までの間、非常用電源は確保されていた。

 また、2号機では、地震に伴う津波の影響により、海水ポンプ室の取水路側から流入した海水が地下トレンチを通じて原子炉建屋内の一部に浸水し、原子炉補機冷却水系(以下、「RCW」という。)(B)系および高圧炉心スプレイ補機冷却水系(以下、「HPCW」という。)の2系統が機能喪失となったが、RCW(A)系が健全であったことから、原子炉の冷却機能に影響はなかった。

 その他、今回の地震・津波の影響などによる重油貯蔵タンクの倒壊事象、1号機DG(A)機能喪失事象を含め、女川1号機〜3号機の主要設備で現在までに59件の設備被害が確認されている。
 なお、今回の地震・津波による外部への放射能の影響はなかった。

2. 地震および津波データ

 発 生 日 時:平成23年3月11日 14時46分
 震 源:三陸沖(震源深さ 24km)
 マグニチュード:9.0(発電所内観測震度 6弱)
 最 大 加 速 度:567.5ガル(水平方向)
 発電所との距離:震央距離 123km、震源距離 125km
 観測された最大津波:O.P.+約13m※ (敷地高さ O.P.+約13.8m※ )
 最大津波到達時刻:平成23年3月11日 15時29分

 ※:3.11地震発生後に公表された国土地理院による女川原子力発電所周辺の地殻変動(−約1m:速報値)を考慮した値

(中略)
別添−1(1/2)
重油貯蔵タンク倒壊写真



別添−3(1/4)
HPCW熱交換器室における海水の浸水状況


(中略)
別紙ー4
 女川原子力発電所第1号機におけるタービン建屋地下1階高圧電源盤火災に伴う原因と対策について

1.事象の概要

 女川原子力発電所1号機は、定格熱出力運転中のところ、平成23年3月11日14時46分に発生した東北地方太平洋沖地震(発電所での観測震度6弱)により原子炉が自動停止した。
 14時57分に中央制御室で火災報知機が発報したため、当社運転員が現場確認に向かったところ、15時30分、タービン建屋地下階からの発煙を確認したことから、15時41分に消防署へ119番通報を行った。
 自衛消防隊消火班が発煙現場の確認および消火活動に向かったところ、発煙による視界不良のため、発煙発生箇所の特定ができないことから、タービン建屋内からの退避指示を実施したうえで、17時15分に二酸化炭素消火設備を起動した。
 その後、発煙の状況と関係する警報の発生状況からタービン建屋地下1階の高圧電源盤エリアが発煙発生箇所と推定し、現場確認を行ったところ、高圧電源盤である常用メタクラ6−1Aのユニット7および8(以下、「当該ユニット」という。)が焼損し、当該ユニット内部が過熱状態であることを確認したため、粉末消火器(合計7本)を使用し、消火活動を実施した。
 鎮火確認については、本来であれば、消防署に行って頂くところであるが、地震および大津波の影響により、発電所の周辺道路は一部損壊しており、発電所の入構ができない状況であったため、協力企業の消防署勤務経験者が22時55分に消火を確認した。
 その後、発電所の周辺道路の応急復旧が完了したため、3月22日に消防署による現場確認が行われ、その結果、本事象は火災であるとの見解が示された。なお、本事象による原子炉施設への影響はなく、また外部への放射能の影響もなかった。
(別添−1、2、3)

2.原因調査

(1)現場調査
 当該ユニットを中心に高圧電源盤である常用メタクラ6−1A(以下、「当該盤」という。)全体に延焼跡があり、当該ユニット内部を確認したところ、MBBの上部に位置する断路部付近の損傷が著しいことを確認した。

(2)当該盤の仕様確認
 当該盤に使用しているMBBは縦型であり、母線との接続位置では昇降装置によって機器内部で30cm程度吊り上げられた状態となっており、耐震架台等による固定は行われていない。
 このため、地震等で大きな振動が加わると当該盤のMBBが大きく揺れる可能性があることを確認した。

(3)電気設備の動作状況調査
 地震発生直後の電気設備の動作状況を確認したところ、地震による原子炉自動停止後の所内母線切替(所内変圧器から起動用変圧器への受電切り替え)が正常に動作しており、その後、当該ユニットの地絡警報が発生していることを確認した。

3.火災発生の推定原因

 上記2.の原因調査より、本事象の原因は、以下のとおりと推定される。
 当該盤内で接続位置にて吊り上げられていたMBBが、地震による振動で大きく揺れた。
 このMBBの揺れにより、当該ユニットにおいて、盤側およびMBB側断路部が破損し、接続導体と周囲の構造物が接触して短絡・地絡が発生し、これに伴い発生したアーク放電の熱により盤内ケーブルの絶縁被覆が溶け、発煙したものと推定される。
(別添−4)

 なお、今回の高圧電源盤における火災の影響により、外部電源を受電している起動用変圧器の過電流継電器が動作し、14時55分に起動用変圧器がトリップしたが、非常用ディーゼル発電機(A)および(B)が正常に動作し、所内非常用設備への電源供給を行っている。
 その後、3月12日02時05分に起動用変圧器が復旧したことから、非常用ディーゼル発電機(A)および(B)が待機状態となっている。
(別添−5)

4.再発防止対策

 MBBを使用している当該盤について、VCBを使用している盤への設備更新を実施する。
 なお、VCBは横置き型であり、断路位置から接続位置にする際は盤内に押し込み、固定する機構があることから、耐震性の高い構造となっている。
(別添−6、7)

5.水平展開

(1)1号機の他の高圧電源盤
 現在、当該盤と同型のMBBを使用している共通メタクラ6−1Sについて、VCBを使用している盤への設備更新を実施する。また,設備更新までの期間については、MBB下部スペースに耐震架台を設置し、地震等によるMBBの揺れの低減を図る。
 なお、共通メタクラ6−1Sならびに既にVCBを使用している盤に設備更新している高圧電源盤について、今回の地震において健全であることを確認している。

(2)2、3号機および予備変電設備の高圧電源盤
 2、3号機および予備変電設備である予備電源盤6−Eの高圧電源盤については、既にVCBを使用している盤を採用しており、今回の地震においても健全であることを確認していることから、対応は不要である。

以上

【別添資料】
1.主な時系列
2.現場配置図
3.現場状況写真
4.火災発生推定メカニズム
5.火災発生に伴う起動用変圧器トリップ事象の流れ図
6.真空しゃ断器(概要図)
7.真空しゃ断器(現場写真)

別添ー1

               主な時系列

3月11日
14:46 地震発生により原子炉自動停止(スクラム成功)
14:47 非常用ディーゼル発電機(A)、(B)自動起動(無負荷運転)
14:55 起動変圧器トリップ(今回の火災の影響と推定)非常用ディーゼル発電機(A)、(B)自動併入(負荷運転)
14:57 1号機 火災報知機動作
15:30 運転員が1号機タービン建屋地下階から火災と思われる発煙を確認(煙の充満により発生源の特定不可)
15:41 緊急対策室より119番通報(15:42石巻広域消防本部入電)⇒地震および津波被害により発電所へ向かえない旨連絡有り
16:14 自衛消防隊消火班 1号機タービン建屋入域開始⇒装備(防火服、空気呼吸器)を準備のうえ地下階へのアクセスを試みるが煙の充満により発生源の特定不可)
17:00 タービン建屋入域者の退避完了(火災の発生源特定不可により二酸化炭素消火設備使用を判断)
17:15 二酸化炭素消火設備による消火開始(主油タンク室、EHC制御油ユニット室、励磁機室)
17:33 現場確認のため、スポット排煙機設置
18:03 自衛消防隊消火班 入域開始
18:37 タービン建屋地下1階の常用メタクラ・パワーセンタエリアが火災発生箇所と推定(発煙状況と当該エリアに関係する高圧電源盤の地絡警報が発生していた状況より)
19:43 タービン建屋地下1階の高圧電源盤である常用メタクラ6−1Aが火災発生箇所と特定(表扉が開放状態、盤内部が焼損していることが確認されたが、炎は確認されなかった)
20:23 高圧電源盤である常用メタクラ6−1A(ユニット7および8)の内部が加熱状態で赤くなっていたため、粉末消火器による消火を実施(合計7本使用)
22:55 消火確認

別添ー2
現場配置図


別添ー3

高圧電源盤 現場写真


健全な高圧電源盤 現場写真

別添ー4
火災発生メカニズム


【火災発生に至る推定メカニズム】
 運転中の接続位置の当該ユニットは、縦型のマグネブラストしゃ断器(MBB)であることから、断路位置から接続位置にする際には、MBBを昇降装置で吊り上げることになるが、MBB下部に耐震架台を設置していないため固定されていない。
 このため、接続位置のMBB下部には30cm程度のスペースが生じることとなるが、地震による大きな振動が加わるとMBBは大きく揺れ、断路部またはしゃ断器内部が変形・破損する可能性がある。
 また、調査結果より当該ユニット内のMBB上部に位置する断路部付近が著しく損傷しており、中央制御室においても短絡および地絡に関係する警報が発報されていたことが確認されていることから、当該ユニット内部でアーク放電が発生していた可能性が高い。
 よって、以下のメカニズムにより火災に至ったものと推定される。

@地震の大きな振動によって、耐震架台が設置されていない当該盤のMBBは固定されず、下部にスペースがあることから大きく揺れ、一次、二次側断路部の接続導体および絶縁物が変形・破損した。

A断路部の変形・破損により接続導体が周囲の構造物(バリアなど)と接触し短絡・地絡が発生した。

B内部短絡により接続導体と周囲の構造物でアーク放電が発生した。

Cアーク放電の発生熱の影響により、盤内ケーブルの絶縁被覆は溶けて発煙し、しゃ断器を含む周辺構造物が焼損した。

 なお、火災発生箇所における火気使用および可燃物(ケーブル絶縁被覆は難燃性)は無く、確認された延焼跡も当該ユニットを中心していることからも電気設備以外の火災要因は極めて考え難い。(当日の自衛消防隊消火班の現場確認の際も炎は確認されていない状況である。)
(後略)
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