[2015_01_14_01]私たちが学んだこと 阪神大震災20年 上 地震学 東大教授 古村孝志 防災に生かす研究重要(東奥日報2015年1月14日)
 

※以下は上記本文中から重要と思われるヶ所を抜粋し、テキスト化したものである

 阪神大震災は災害対応の在り方を大きく変えた。あれから20年。将来の地震や災害への備えは万全と言えるのか。専門家に現状と課題を聞いた。
 <阪神大震災は地震学者に衝撃を与えた。この地域には活断層が多く、地震が起こり得ることは想定できた。だが揺れの激しさは予想を超えた>
 不思議でしたね。地震ではガタガタという強い揺れが何分も続き、建物がへたって壊れる、そんなイメージがあった。ところが神戸の地震では、わずか15秒の間に強いパルス状の地震波が二つ来ただけ。それで、あれほどの被害が出るのかと驚きました。
 被害が集中した場所も謎でした。動いた断層は六甲山と神戸の間にある。しかし震度7に襲われたのはその真上ではなく、南側に離れた市街地。いわゆる「震災の帯」で、地下2〜3キロの厚い堆積層が地震波を増幅し、山側から来た地震波と重なったのが原因でした。
 大きく揺れるのは、断層の真上で埋め立て地など浅い地下の地盤が悪い場所、という常識が覆ったわけです。より深い地下構造も揺れに関係し、断層から離れた場所も危険、となった。
 言い換えると、地下構造を調べ、断層の位置も分かれぼ計算機でシミュレーションし、起こり得る地震での揺れや被害を予測できる。その方向性が見えたのは、神戸の地震がきっかけです。
 国が補助金を出し大阪や名古屋、首都圏などの平野部で地下構造の調査や断層の掘削調査が行われ、シミュレーションによる被害想定が進んだ。
 <地震の直前予知はできず、研究は見直しを迫られた。基礎研究の重要性が強調される一方、政府が新設した地震調査委員会による「長期評価」が登場。しかし東日本大震災の巨大地震を予測することはできなかった>
 長期評価は、例えば30年以内に一定規模の地震が起こる確率を示すもの。何万年とかの期間で見れば、それに近い結果になるはずですが、30年以内にこの通りに地震が起きると言っているわけではないんです。
 東北沖でマグニチュード(M)9の地震が起きない理由はなく、可能性を考えるべきでした。あそこでは50〜100年ごとにM7〜8の地震が繰り返し起きていて、それを超える地震は起きないと漫然と考えていた。
 太平洋側の南海トラフで起こる地震も同じ。以前は「東海」「東南海」「南海」のブロックごとに規則的に地震が起こるというのが定説でした。
 しかし東日本大震災後に過去の地震記録を見直すと、あまり規則的ではない。中には遠く離れた小笠原で起きた可能性があるものまで出てきた。
 調べれば調べるほど分からなくなっていますが、地震が不規則に起こっていても地震学を防災に生かす道はあります。
 起こり得る地震発生バターンを全てシミュレーションし、揺れの強さの最大と平均を計算する。重要な構造物なら最大、一般構造物は平均よりも少し強い揺れを考えて造るといった使い方です。
 ただ最大級の揺れをもたらす地震がどれくらいの間隔で来るのか分からないと対策に使うのは難しい面もある。そこで重要になるのが防災関係者との共同作業です。
 対策を作るのに精度の高い予測はいらないこともある。現場には、復旧作業を考える上で余震がどう続くか知りたいという声もある。それに応える研究や情報の出し方を考える必要がある。
 そういう横のつながりをつくって進めないとへ本当に役に立つ研究はできない。二つの大震災を経て、地震学者は皆そう考えるようになったと思います。(聞き手・辻村達哉、写真・牧野俊樹)

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