[2015_11_29_01]最大級津波 過小評価か 日本海側の政府想定 専門家「再検討を」(東奥日報2015年11月29日)
 政府の調査検討会が昨年公表した日本海側の最大クラスの津波想定は、過小評価の恐れがあり再検討が必要とする分析を、前原子力規制委員長代理の島崎邦彦東京大名誉教授(地震学)が28日、岡山市で開かれた日本活断層学会で発表した。
 津波は海底の地形が地震などで急激に変化して起きる。調査検討会が想定に用いた手法では、土木工学会や国の原発規制基準で使われる従来の手法より地震規模が小さくなることがある。
 この結果、能登半島以西て地震規模が従来手法の4分の1程と見積もられる例も出た。それより東では大きな違いはないという。
 島崎氏は東日本大震災を受けて安全面を重視した対策を訴えてきた。調査検討会の想定を「最大クラスとはほど遠く、かなり小さな地震像で問題だ」と批判する。
 調査検討会の座長を務めた阿部勝征東大名誉教授は「(地震規模が)小さいことは認めるが、それを補うため、断層のずれを大きくするなど津波の高さが最大になるよう配慮した。過小評価とは心外だ」と反論する。
 昨年8月に調査検討会が公表した想定は、自治体の津波対策に役立てる狙い。近海の断層地震に伴う津波を多数仮定して津波の高さを算出した。
 九州や山陰は最大4・4メートルだが、北海道や東北の平地部で10メートル超と高く、北海道の海岸線で20メートル超も起きうるとした。
 調査検討会が採用したのは地震規模を示す「地震モーメント」を、地下にある断層の面積を推計して見積もる手法。これに対し従来手法は、地形情報などから断層の長さを読み取って地震規模を見積もる。いずれも基本想定の上に安全余裕を乗せて津波の高さを想定する。
 島崎氏が従来手法で分析すると、京都府沖合に延びる郷村断層の延長部と、鳥取県沖の断層で起きるずれの大きさはそれぞれ5・4メートルと7・6メートル。調査検討会の想定は2・8メートルと4メートルで、いずれも従来手法より小さかった。
 阿部氏らは地震規模が小さくても安全余裕を多めにすれば問題ないとの立場。
 島崎氏はベースとなる想定が小さすぎると指摘している。

 日本海側の津波想定

 巨大地震や大津波を繰り返す太平洋側に比べ、日本海側は地震が少なく文献記録も豊富ではない。津波研究や痕跡調査も太平洋側が中心で、日本海側は防災面の対応が遅れてきた。一方、1983年の日本海中部地震や93年の北海道南西沖地震の経験から、地震規模が小さくても津波が高くなる傾向が分かっている。東日本大震災後に想定の遅れが問題視され、国よりも早く独自で最大津波を想定した県もある。
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