[2016_11_12_01]福島廃炉・賠償費 新電力負担案に批判 経産省有識者会合(毎日新聞2016年11月12日)
 
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福島廃炉・賠償費 新電力負担案に批判 経産省有識者会合

 経済産業省の有識者会合「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」が11日開かれ、東京電力福島第1原発の廃炉や事故の賠償などにかかる費用を、「新電力」と呼ばれる新規参入事業者にも求める経産省案に疑問の声が相次いだ。想定より膨らむ費用に対応する狙いだが、年内の取りまとめに向けて曲折も予想される。【川口雅浩、宮川裕章】
 「事故を起こした原発の廃炉費用を(大手電力だけでなく、新電力が大手電力の送電網を利用する際に払う)託送料でというのは違う気がする」
 「福島第1原発事故の負担のために、電力自由化の制度がゆがむことがないよう注意する必要がある」
 電力自由化によって競争を促すために参入したのが新電力。有識者会合では、新たな負担でその目的が達成されるかなどの懸念も示された。
 特に福島第1原発事故の賠償額は、従来の想定である5・4兆円から上振れすると見込まれている。現在は国と東電を含む大手電力各社が出資する「原子力損害賠償・廃炉等支援機構(原賠機構)」が立て替え、大手電力が年約2000億円を負担しているが、追いつかないのが実態。このため「新電力の利用者も過去には原発の電力を利用していた」として、新電力の利用者からも託送料に上乗せして賠償に必要な資金を回収しようとする案を示した。だが、有識者からは「過去に利用と言われても、規模感や誰が負担すべきものなのかわからない」との声が出た。
 これまでの有識者会合では、原発を保有する大手電力が、原子力規制委員会の新規制基準などを受け、自社の運転計画より早期に廃炉を決めた原発について、託送料を通じて自社管内の新電力に廃炉費用の負担を求める案が示されている。事故を起こした福島第1原発の廃炉についても、東電管内の新電力の託送料に上乗せする案が軸。これらの点について「原発事業者が回収すべきものを新電力が負担するのは、国民の理解が得られない」との声も出た。経産省は「引き続き議論し、しっかり検討していきたい」と述べたが、意見集約は難航しそうだ。

新電力

 大手電力会社が地域ごとに独占してきた電力市場に競争を起こすため、電力小売り事業に参入が認められた事業者。参入者が増えることで海外に比べて高いと指摘される電気料金を引き下げる効果が期待されている。
 今年4月に電力小売りが全面自由化されたことで、新電力会社は「小売電気事業者」の登録があれば、家庭や商店など50キロワット未満の契約先とも取引できるようになった。事業者の業種はガスや石油元売りだけでなく通信など多岐にわたり、登録数は10月24日時点で356(大手電力10社を含む)。自社で所有する発電設備のほか、卸電力市場から電気を調達し、大手電力会社の持つ送配電網を使って契約先の家庭や工場などに販売している。
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