[2018_01_03_02]<原発輸出>国民負担リスク 電力会社巻き込み 英国内賛否(毎日新聞2018年1月3日)
 
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<原発輸出>国民負担リスク 電力会社巻き込み 英国内賛否

 日立製作所の原発輸出に絡み、政府はメガバンクや電力会社も巻き込んだ総動員態勢で、支援に乗り出す。国内の原発新設が困難な中、政府は英国への原発輸出を技術継承の好機と位置づけ、巨額の財務リスクも辞さない構えだ。だが、コストがかさむ一方の原発建設には、英国内ですら賛否が分かれている。巨額のリスクを負ってまで支援する意義があるのか、冷静な議論が必要だ。【坂井隆之】
 原発建設は、2011年の福島第1原発事故後の安全対策費用の増大や「脱原発」世論の高まりを受け、各国で難航している。米国では、東芝子会社のウェスチングハウスが工期長期化を原因に巨額損失を計上し、17年3月に経営破綻。仏原子力大手アレバも、フィンランドなどでの原発建設遅延で経営が悪化し、政府支援を受けた。日本政府は、(1)新興国をはじめとする多くの国が原発を必要としている(2)日本の原発技術を維持する必要がある−−として輸出推進の姿勢を崩していないが、いったん日本への発注を決めたベトナムが16年に白紙撤回するなど、苦戦が続いている。
 こうした中、政府が期待をかけるのが英国だ。20年にかけて老朽化した原発や火力発電所の引退が相次ぐ英国は穴埋めのため、原発6カ所の新設計画を持つ。経済産業省幹部は「先進国だから交渉がスムーズで世論の反発も少ない」と好条件であることを強調する。
 だが、英国でも福島の原発事故以降、英、独、スペインのエネルギー大手が原発計画から撤退しており、多くの企業が採算性を疑問視しているのが実態だ。やむをえず英政府は、仏電力EDFが英南西部で進める原発計画に対し、現行電力料金の2倍の破格の買い取り価格を保証したが、「高すぎる」と世論の批判を浴びた。このため今回は日本政府の支援を少しでも引き出したい考えで、日本にとって厳しい交渉になる可能性もある。今回融資を出す方針の大手銀行からも「事故が起きたら『貸手責任』を問われないか」(幹部)と不安の声が漏れる。政府は国民にとってのリスクとメリットの丁寧な説明が求められそうだ。

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