[2018_02_21_01]<経産省>送電線の運用柔軟化へ 再生エネ導入拡大目指す(毎日新聞2018年2月21日)
 
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<経産省>送電線の運用柔軟化へ 再生エネ導入拡大目指す

 再生可能エネルギーの導入拡大に向け、経済産業省は2018年度から送電線の運用ルールを段階的に見直す。固定価格買い取り制度(FIT)導入で再生エネ電力が急増し、送電線の空き容量不足が深刻化していることに対応。既存の送電線の容量を最大限活用することで再生エネの新規参入を進める「コネクト・アンド・マネージ」と呼ばれる手法を取り入れる。
 12年のFIT導入以来、北海道や東北、九州など地価の安い地方で大規模太陽光(メガソーラー)や風力発電が急増し、送電線がパンク状態となっている。このため経産省は15年度、複数の新規参入者が送電線の増設費用を分担する制度を導入。電力会社は送電線の増強工事とセットで新規参入者を入札で募っている。
 ところが、東北電力が16年10月に東北地方北部で送電線増強とセットで約280万キロワット分の入札希望者を募集したところ、17年8月時点で風力発電を中心に1545万キロワット分の応募があった。このままでは落札価格が高騰し、再生エネ事業が成り立つかどうか見通せない状況となった。 そもそも東北電力は、280万キロワット分の空き容量について、停止原発も含めた全ての発電所が同時にフル稼働する前提で計算していた。だが全発電所がフル稼働するケースは現実的でなく、「再生エネを導入できる空き容量はもっとあるはず」と指摘されていた。
 再生エネ導入で先行する欧州では、まず再生エネを導入して送電線が容量オーバーになった場合に発電量を抑制する「コネクト・アンド・マネージ」という手法を取っている。再生エネ導入に積極的な経産省の有識者委員会などから「欧州のように柔軟な運用が必要」との声が高まった。
 こうした指摘を受け東北電は今年2月に予定した入札を4月に延期。その間に基幹電源である火力発電の稼働状況や、季節や時間帯によって異なる再生エネ電力の発電量を過去の実績に沿って再計算するなど送電線の空き容量の計算方法を見直した。その結果、受け入れ枠は280万キロワットから350万〜450万キロワットに拡大。現状では全ては無理だが、容量をオーバーしない範囲で再生エネを受け入れる検討を始めた。
 経産省は再生エネの導入拡大に向け、東北電と同様の運用方式を全国に拡大する方針だ。世耕弘成経産相も「一定の条件のもとで系統への接続を認める仕組みのコネクト・アンド・マネージの検討は重要。4月から運用の見直しを抜本的に行っていきたい」と意欲を示している。送電線の容量計算の見直しに加え、緊急時に備えて設定している空き容量を減らすなどの措置を段階的に導入していく。【片平知宏】

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