[2018_05_06_01]<原発廃棄物>独自に制限 処分場の2割、受け入れに抵抗感(毎日新聞2018年5月6日)
 
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<原発廃棄物>独自に制限 処分場の2割、受け入れに抵抗感

 東京電力福島第1原発事故で発生した汚染廃棄物を巡り、東日本の処分場128カ所のうち2割が、国の安全基準(放射性セシウム濃度1キロあたり8000ベクレル)とは別に、独自基準を設けて受け入れを制限していることが、環境省の調査で明らかになった。環境省は2016年4月、安全基準を下回った指定廃棄物を通常の廃棄物と同様に処分できるよう制度変更したが処分は進んでおらず、処分場側に根強い抵抗感がある実態が示された。
 調査は13年度から毎年実施。報告書は非公表で、毎日新聞は情報公開請求で16年度の調査報告書を入手した。調査対象は東北・関東10都県にある廃棄物の最終処分場141カ所。このうち128カ所(公共施設113、民間施設15)から回答があった。
 報告書によると、独自基準の有無について、26カ所が「ある」と回答。99カ所が「なし」と答えたほか、「その他」が1カ所、「無回答」が2カ所あった。独自基準の内訳は、「3000ベクレル以下」6カ所▽「3000〜5000ベクレル以下」5カ所▽「5000〜8000ベクレル以下」15カ所−−だった。
 毎日新聞が茨城県内の処分場を取材したところ、民間処分場3カ所が「ある」と回答したことが判明。ある処分業者は「環境省は早く処分させたいのだろうが、汚染廃棄物は受け入れがたい。処分しているのを知られたら地域住民からどう思われるか」と独自基準の理由を明かした。
 環境省廃棄物規制課の担当者は「8000ベクレルは安全性が確認された数字。それより低い独自基準を設けて廃棄物の処理に影響が出るのは望ましくない」としている。【山下智恵】

 ◇現地保管が長期化

 指定廃棄物の処分を進めるため、環境省は1キロあたり8000ベクレル以下になった場合に指定を解除できる制度を設けた。しかし、放射能濃度が基準を下回っても指定の解除は進まず、現在地での保管が長期化している。
 茨城県南部の4市でつくる常総地方広域市町村圏事務組合は3月、同県守谷市内に指定廃棄物の保管施設を完成させた。同組合の清掃工場から出た、汚染された焼却灰が入ったドラム缶を保管。厚さ30センチ以上のコンクリートで覆った強固な造りで、放射線を99%遮蔽(しゃへい)できるとしている。総工費約2億円は国が負担した。組合の担当者は「一時保管が目的」と説明するが、処分はおろか解除申請の予定すら立っていない。
 環境省は当初、宮城▽茨城▽栃木▽群馬▽千葉−−の5県に1カ所ずつ指定廃棄物の処分場を設置する方針を示した。しかし、激しい反対運動に直面し迷走。茨城県内分については分散保管の継続を認めるとともに、指定解除の制度を設けた。
 だが、18年3月までに指定解除されたのは、千葉、山形、宮城3県の64トンで全体量約20万トンの0.03%にとどまる。
 環境省は17年3月、茨城県内の指定廃棄物約3500トンのうち約8割が8000ベクレルを下回ったとする再測定結果を明らかにした。しかし、自治体などに指定解除を申請する動きはない。ある市町村の担当者は「8000ベクレルを下回っただけではどこの処分場も引き受けない。濃度がさらに下がるのを待つしかない」と打ち明ける。【山下智恵、安味伸一】

 【ことば】指定廃棄物
 東京電力福島第1原発事故後に制定された「放射性物質汚染対処特別措置法」に基づき、放射性セシウム濃度が1キロ当たり8000ベクレルを超え、国が指定した汚染廃棄物。国が処理責任を負う。市町村の清掃工場で出た焼却灰や稲わらなどがある。3月末時点で11都県に約20万トン。福島が約18万トンを占め、栃木約1万3500トン▽千葉約3700トン▽茨城約3500トン▽宮城約3300トン−−と続く。

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