[2018_05_11_02]ハワイ島の噴火は地球物理学の「常識」(島村英紀2018年5月11日)
 
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ハワイ島の噴火は地球物理学の「常識」

 さる5月3日からハワイ島で噴火が起きている。住宅地や近くの林に亀裂が生まれ、噴水のように溶岩が噴出した。2000人近い人々に避難命令が出され、マグニチュード(M)6.9の大きな火山性地震も起きた。幸い、人的な被害はない。
 だが、地球物理学者である私はちっとも驚かない。ハワイ島でこのような噴火があることは地球物理学の「常識」だからである。
 ハワイには人が住む8つの大きな島と多くの小さな島がある。ハワイ島は、その中でも最大の島で一番南東にある。標高4205メートルあるマウナケアと、それより低いマウナロアやキラウエア火山がある火山島だ。
 ハワイ諸島が載っている太平洋プレートは年に8センチほどの速さで動いているが、その下からマントルプリュームというものがプレートを突き抜けて上がってきて溶けた溶岩を作っている。
 日本人が多く行くホノルルがあるオアフ島はハワイ島から北西に約300キロ離れており、ここでは噴火はない。オアフ島は大昔には噴火した火山島だが、プレートが動いたために、地下のマントルプリュームの上昇がなくなってしまったからだ。
 ハワイのマグマは、日本のマグマと違う。日本では太平洋プレートやフィリピン海プレートが日本列島を載せている大陸プレートと衝突したあと、日本列島の地下に潜り込んだところでマグマを作る。その深さは約100キロほどだ。
 だが、ハワイのマグマは、2000キロ以上深い地球内部から上がってくるマントルプリュームを元にしている。プレートよりもはるかに深いところから上がってきている。
 太平洋プレートが動いていくときに、固定したマントルプリュームのせいで次々に火山島が出来ていったのがハワイ諸島なのである。
 いまは、南東の端のハワイ島の地下でマグマが盛んに活動している。だが、数万年あとにはハワイ島の噴火が収まる。そして、いまはハワイ島の南東の海底にあるロイヒという海山が、「次のハワイ」になるはずだ。ロイヒは、海底からぶくぶく、火山ガスを出している。いずれは噴火を繰り返して火山島になって、海面上に姿を現す。
 一方、ハワイ諸島の北西の島々は温度が下がって縮まり、海の浸食もあって海面下に姿を消すはずだ。
 じつは、ハワイ諸島から延々、ロシア・カムチャッカ近くまで、海面上には見えないが、何十もの海山が続いている。全体の長さは5000キロ近い。
 この海山は、北西に行くほど古い。かつては火山島だったものが、いまは海山になっている。これは皆、「昔のハワイ」なのだ。
 ハワイ島には30回を超える噴火が知られている。だが、人間が住み着く前からはるかに多くの噴火があったに違いない。これからもハワイ諸島の中でもハワイ島にだけは、噴火と火山性地震が繰り返すに違いない。
 火山や地震が避けられない日本と同じように、ハワイ島も地球物理学の観点からは「必ず噴火が起きる」場所なのである。

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