[2025_08_01_10]「原発への投資」どころではない東京電力の財務状況 東電第1四半期決算報告「4〜6月期8500億円の最終赤字」のすさまじい内容 デブリ「試験的取り出し」だけで1兆円近い損失、本格的取り出しなど到底不可能 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2025年8月1日)
 
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「原発への投資」どころではない東京電力の財務状況 東電第1四半期決算報告「4〜6月期8500億円の最終赤字」のすさまじい内容 デブリ「試験的取り出し」だけで1兆円近い損失、本格的取り出しなど到底不可能 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

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 東京電力ホールディングス株式会社(以下「東電」)は7月31日に「2025年度第1四半期決算(2025年4月〜6月)」を発表した。
 これに基づき独自に、経営分析・投資判断評価・販売電力量推移・電気料金の動向・今後の見通しについて分析しました。
 柏崎刈羽原発を再稼働することに資源を投入し続け、挙げ句に顧客を失い続けた結果、将来を見失った巨大電力会社の哀れな現実です。
 原発再稼働を叫ぶ人々は、この現実をどのように解釈するつもりでしょうか。
https://www.tepco.co.jp/about/ir/library/results/pdf/2603q1gaiyou-j.pdf

 1.経営状況の概要

 売上高は前年同期比で674億円も減少し、1兆4,251億円(前年比95.5%)。
 経常利益は燃料費調整制度の「期ずれ」影響で一時的に利益を確保しつつも、1,012億円(前年比99.1%)とほぼ横ばいで推移。
 四半期純損益は▲8,576億円!!(前年同期は+792億円)と、巨大な赤字で、これは福島第一原発の「燃料デブリ取り出し準備作業費」などの災害特別損失が9,030億円に達したことが原因としている。
 「新たに見込まれる取り出し準備の作業費用等 9,030 億円を災害特別損失に計上したこと」との説明だが、いったいなにを計上したのかは記載がない。
 「3号機 燃料デブリ取り出しに係る設計検討について」が公表されたのは7月24日。記載の工法の成立性など、分からないことだらけである。
 この資金をどうやって調達するのか、改めて問われる。

 ◎特記事項

 原発事故対応費(特別損失)の急増は一過性だが、引き続き経営負担として重くのしかかってくるこことは変えようがない現実。総資産減少・純資産大幅減・自己資本比率の25.1%から19.3%(▲5.8pt)への悪化という財務状況は深刻。

 2.投資対象としての評価は

 プラス材料として考えられることは、会社別では、燃料費調整制度の好転で「東電エナジーパートナー」や「東電フュエル&パワー」が増益の見込み。再エネ(東電リニューアブルパワー)も利益を伸ばしている(+34億円)ことが好材料といえば好材料。
 しかしマイナス材料は、原発事故処理費が巨額にのぼり悪化の見通しは変わらず。
 再稼働時期未定の柏崎刈羽原発も収益寄与はできず、安全対策工事の遅れと工事費の更なる追加負担が見込まれ、経営悪化の原因になっている。
 自己資本比率が著しく悪化しており、財務基盤の脆弱化が進行中であるため投資家にとってはリスク要因が多く、長期的な安定配当や成長性には欠ける会社である。
 総合評価として、投資評価としては、短期的には「不適格」、中長期的には「慎重判断」であり、全体的には「投機的」である。
 原発関連コスト・政府支援依存・需給構造リスクにより、リスクプレミアムの高い投資対象と評価せざるを得ないのが実情。

 3.販売電力量と料金の推移

 さて、東電は株主総会で「電力需要の増加見通しといった事業環境変化をビジネスチャンスと捉え、発電、配電、送電効率、電気事業の各施策を連携させながらグループ一体となって取り組み、収益基盤を強化してまいります。」(山口副社長)と発言していた。
 では、販売電力量はどうなっているのか。
 現実は、総販売電力量は481億kWhで前年同期比▲42億kWh、92%に留まっている。
 そのため、小売販売は386億kWhと前年から▲38億kWh(91.1%)、卸販売も95億kWhから▲5億kWh(95.5%)と、全てがマイナス計上である。
 販売減の要因は、電力需要の減退、節電意識の高まり、競合他社への顧客流出などが影響していると考えられる。

 これは、東電が主張し、国も原発再稼動の理由としてきた「生成AIやデータセンターによる電力需要の増大」とは全くかけ離れた姿だ。
 なお、東電の2025年度の株主総会の議題でもあった「2024年度報告書」によると、総販売電力量2,287億kWhから2024年度は2,286億kWhへと1億kWh(1%)減少していた。
 この流れは今年の第一四半期でも変わらないどころか拡大していることが明らかになった。(10%も減少している)
 料金水準(売上高ベース)を見ると販売電力量は減少しているが、単価維持・調整制度の作用で売上水準はある程度支えられている。
 これは電力料金単価が上昇していることを意味しており、消費者は高い電気料金を押しつけられていることになる。当然、顧客を失う結果となっている。

 4.今後の見通しとリスク

 業績予想はこのままでは「未定」であり、柏崎刈羽原発の再稼働時期が見通せないため、通期予想の提示を見送っている。ことで、懸念材料ばかり増えている。
 原発の損失が今後も不確定要素となっており、巨額の負担がのしかかっている。単に「試験的取り出し」に過ぎないデブリ取り出し作業だけで1兆円近い損失がでるとしたら、本格的取り出しなど到底不可能であると言うほかない。

 電力自由化に伴う競争激化では電気料金競争で勝てる見込みはなく、金利上昇や資金調達環境の悪化が財務に影響を与え続けている。
 可能性のある財務改善要素としては原油・LNG価格の低下と為替安定がコストを低下させる要因として考えられますが、国際情勢の変化でさらに価格上昇を来せば、電力料金に跳ね返り、顧客を失うリスクも高まる。
 原子力設備投資を抑え、効率経営とグループ会社の収益寄与(特に送配電・再エネ部門)を実現しなければ、今後の見通しは暗い。
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