[2024_04_03_09]【日本海側海域活断層・自治体アンケート】進まぬ「長期評価」一因に 被害想定に温度差(静岡新聞2024年4月3日)
 
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【日本海側海域活断層・自治体アンケート】進まぬ「長期評価」一因に 被害想定に温度差

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 日本海側に多い海域活断層は、地震による強い揺れと津波、両方の被害をもたらす恐れがあるが、沿岸16道府県の想定には温度差があった。活断層が引き起こす地震の規模などに関する政府地震調査研究推進本部(地震本部)の「長期評価」が進んでいないことが一因と考えられる。専門家は「国の評価を待っていては遅い」と指摘、存在が分かっている活断層がもたらす被害を、自治体がきちんと見極めておくよう訴える。

 ▽待ちの姿勢

 揺れと津波による被害を両方とも想定していた自治体の多くが用いたのが、2014年9月に国土交通省などが「日本海における大規模地震に関する調査検討会報告書」で示した断層モデルだ。
 このモデルは、東日本大震災後の11年12月に施行された「津波防災地域づくりに関する法律」に基づいて津波災害の防止、軽減のために作られた。必ずしも地震の揺れ被害に着目したものではなかった。
 このモデルによる津波被害のみを想定した福井県は、共同通信のアンケートで「今後、地震本部で新たな評価が示された場合には、被害想定も含めた地域防災計画の見直しを行う」と説明。浸水する範囲と水面までの高さのみを想定した長崎県は「22年3月に政府が公表した長期評価で、近海の海域活断層が明らかになった」として、建物被害や人的被害などの想定を見直す考えを示した。
 地震本部はこれまで、主に陸域にある114カ所の「主要活断層帯」の地震と、南海トラフなどで起きる海溝型地震の長期評価を公表しているが、日本海側の海域活断層の評価は進んでいない。一部の回答からは「国の評価待ち」の姿勢がうかがえた。

 ▽独自調査も

 一方、その他の多くの自治体は、国交省のモデルを地震の揺れ被害想定にも活用している。理由について、鳥取県は「県沖に想定されている断層で地震が発生した場合、地震の揺れによる被害、津波による浸水被害ともに大きな被害が発生する」と説明した。
 「東日本大震災を参考に『想定外をつくらない』という考えの下、多様な被害を想定した」とする秋田県や、「社会的な影響やさまざまな状況を視野に入れた幅広い被害想定としている」とする島根県は、独自の調査による海域活断層の設定もしていた。

 ▽能登踏まえ

 能登半島地震では、津波による浸水被害に加え、震度6超の強い揺れによる建物の倒壊、液状化、土砂崩れ、断水などさまざまな被害が出た。
 各自治体の被害想定では「建物」「液状化」「上下水道」「道路や鉄道」といった項目が多くで共通していたものの、そこまで細分化していない自治体もみられた。同じ項目でも、例えば上下水道の被害で復旧日数を考慮しているか、人的被害に落下物やブロック塀の倒壊といった詳細な事象まで考えているかといった想定内容は、自治体ごとに違いがあった。
 能登半島地震で、地滑りや液状化被害に注目した東京大の佐藤比呂志名誉教授(構造地質学)は「個人で家の耐震化はできても地盤が弱ければ液状化する。複合的、立体的に目配りをした想定をするべきではないか」と指摘。「地震本部の評価が出るまで待っていては遅すぎることもある。国任せにせず、学会で発表される情報などに日頃からアンテナを張っておく必要がある」と話す。
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