[2024_03_21_02]「やっぱり選挙か」 原発の信を問う新潟県知事、覚悟と周囲の思惑(毎日新聞2024年3月21日)
 
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「やっぱり選挙か」 原発の信を問う新潟県知事、覚悟と周囲の思惑

 06:30
 未曽有の事故を起こした東京電力は、原発を動かせるのか。失い続けた信のつけはあまりにも大きい。
 「信を問う方法は、やっぱり選挙になるんですかね」。2023年夏、新潟県の花角英世知事は酒席で自民党の県連幹部にこう投げかけた。そして、続けた。「そうなった時は自民党さん、しっかり応援してもらえますよね」
 花角氏は18年の初当選時から、東京電力福島第1原発事故の原因や健康への影響、避難方法などに関する県独自の検証が終わり次第、再稼働について議論し、東電柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)の再稼働に対する自身の見解を表明して「県民に信を問う」との考えを示してきた。具体的な手法は明言していない。県民投票を求める声もあるが、花角氏は「知事選も一つの形だ」としてきた。

 柏崎刈羽原発は全7基で出力計821・2万キロワットと世界最大級の原発だ。大消費地・東京を含む東電管内に電気を届けてきたが、福島第1原発事故後の12年3月までに全基が運転停止した。17年に同原発6、7号機(各135・6万キロワット)は再稼働の前提となる安全審査を通過したが、21年にテロ対策の不備などトラブルが相次いで発覚し、原子力規制委員会は同年、事実上の運転禁止命令を出した。
 再稼働に向けた動きが再開したのは23年だ。県が再稼働の議論の前提とする検証取りまとめは9月に終了。追加の検査をしていた原子力規制委員会も12月27日に東電による原発の運転に問題がないと判断した。地元の同意を取り付けて再稼働するかどうかに焦点は移った。
 だが、知事選を打てる状況にはない。自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で、知事を支援する与党・自民党に対する逆風は強まる一方だ。年明けに発生した能登半島地震で、原発事故時の避難の課題も浮き彫りになった。2月には福島第1原発で汚染水漏れが発生し、東電に対する信頼は地に落ちたままだ。
 経済産業省幹部は「自民1強ではない新潟は元々選挙が難しい。この状況で知事選となれば地元は大変だ」と気をもむ。ベテラン自民党県議の一人は「党が支えなければ知事は立候補できない。地震で我々も避難計画などを考える機会になっている。知事選なんてあり得ないし、年内に再稼働はない」と言い切る。
 その一方で、国は早期再稼働を目指して動く。岸田文雄政権は、脱炭素化の動きやエネルギーの安定供給の確保のため、原発を活用する方針に転換したためだ。加えて、柏崎刈羽原発は、福島第1原発の廃炉とも密接にかかわる。再稼働で東電の収益を改善させ、廃炉費用の捻出につなげる役割がある。
 3月21日には村瀬佳史資源エネルギー庁長官が新潟県入りして再稼働の必要性や安全対策などを説明し、県知事に再稼働の了解を求める。関係者の思惑は交錯するが、地元同意の具体的な手法やスケジュールはまだ見えない。

 リスクを負う花角氏の覚悟

 「知事は(選挙を)やる。自分が犠牲を払わないと、国は新潟県のことを理解してくれないと考えている」

 こう花角氏の心境を代弁するのは自民党県議だ。複数の関係者によると、(後略)
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