[2024_02_28_08]東海村長が原発事故避難計画の「不備」認める 「複合災害、ゼロから検討するしか」東海第2原発が立地(東京新聞2024年2月28日)
 
参照元
東海村長が原発事故避難計画の「不備」認める 「複合災害、ゼロから検討するしか」東海第2原発が立地

 21:33
 首都圏唯一の原発である日本原子力発電東海第2原発の重大事故に備え、立地自治体の茨城県東海村が昨年12月策定した広域避難計画について、山田修村長は28日の定例会見で、地震や津波と原発事故が同時に起きる「複合災害」の想定が現在はされていないとの認識を示した。村側は1月、避難計画に関する立憲民主党の聞き取りに、現時点では複合災害の想定が不十分との認識を示していたが、村長が直接言及するのは初めて。(出来田敬司)

 東海第2原発 日本原子力発電が茨城県東海村に設置する沸騰水型軽水炉で、出力は110万キロワット。1978年に営業運転を開始した。2011年の東日本大震災時は外部電源を失い、原子炉の冷温停止まで3日半かかった。原子力規制委員会は18年9月、新規制基準に適合すると認め、18年11月に最長20年の運転延長を認めた。防潮堤建設などの事故対策工事やテロ対策施設の工事は24年9月に終える計画。再稼働には県と東海村の他に、全国では初めて立地自治体以外の水戸市など周辺5市の事前了解も必要となる。

 能登半島地震では、北陸電力志賀原発(石川県志賀町)周辺の避難ルートが寸断されたことを受け、記者の質問に答えた。

 ◆「道路損壊など国、県と議論」具体策触れず

 山田村長は「複合災害の場合を含めれば、(避難計画を)ゼロから検討するしかない」と述べた。「道路の損壊などは村だけでなく、周辺の自治体や国、県が入ったところで議論される」とし、村単独での対応の難しさにも言及。具体的な見直しには触れなかった。
 東海村が昨年末に公表した避難計画では、全村民約3万7000人が約130カ所の避難先に原則、自家用車で避難する。高齢者など支援が必要な人や自家用車がない人のためのバス、福祉車両などの手配の見通しは立っていない。

 ◆「屋内退避は複合災害では不可能」と住民側

 東海第2原発を巡っては、茨城県内や東京都内など9都県の住民が運転差し止め訴訟を係争中で、一審水戸地裁は2021年3月、「避難計画に実効性がない」として運転を認めない判決を言い渡した。
 今月20日にあった東京高裁での控訴審弁論で、住民側は能登半島地震の被災状況から、原子力規制委員会が事故時の防災指針で住民の被ばく対策としている屋内退避は「複合災害では不可能」などと、避難計画の不備を改めて主張した。

  ◇  ◇

 ◆住民の命を守るため、原子力防災を見直す必要がある

 <解説>地震や津波で建物や交通網に被害が出た場合、原発事故時の避難計画はまったく役に立たない。茨城県東海村の山田修村長の発言は、原子力防災の致命的な欠陥を端的に示している。
 原発30キロ圏内の自治体に義務付けられている避難計画は、原子力規制委員会が策定した指針を基に作る。指針が定める住民の被ばく防止や避難の方策は、あくまでも自然災害への対処ができていることが前提だ。
 能登半島地震では多くの家屋が倒壊し、道路も寸断。原発事故が起きていれば、被ばくを避けるために建物内にとどまることも、避難することも困難だった。東海第2原発の事故時に避難が必要な30キロ圏内には、90万人を超える人が住む。
 原発事故は、大きな自然災害とともに起きる。13年前に起きた東京電力福島第1原発事故が突き付けた。運転中の原発も含めて一度立ち止まり、規制委、政府、自治体が一体となって、住民の命を守るための防災のあり方を抜本的に見直すべきだ。(小野沢健太)
KEY_WORD:能登2024-東海第二原発再稼働_:NOTOHANTO-2024_:FUKU1_:HIGASHINIHON_:SIKA_:TOUKAI_GEN2_: