[2024_03_21_01]水道管は復旧したのに蛇口から水が出ない 能登半島地震 修理依頼が殺到、100軒以上で2カ月待ちも(東京新聞2024年3月21日)
 
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水道管は復旧したのに蛇口から水が出ない 能登半島地震 修理依頼が殺到、100軒以上で2カ月待ちも

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 能登半島地震の被災地で、破損した水道管が復旧したにもかかわらず、民家の敷地内の配管が壊れたままで、水道が使えないケースが相次ぐ。敷地内の修理は住民自身がする必要があるが、地元業者に依頼が殺到し、順番待ちに。行政が公表する水道復旧率は、実際に使える割合を示しておらず、深刻な課題となっている。

 ◆「敷地内の配管が壊れている」…自力で修理する必要

 「目の前の水道管に水は来たのに、工事した人に『民家敷地の配管修理はできない』と言われた。水が出ると聞いて、避難先から戻ってきたのに」
 石川県輪島市山岸町の女性(65)は3月上旬、県外の避難先から自宅に戻った。11日に水道管の復旧工事があったが、蛇口から水が出ない。工事をした東京都水道局の職員から「敷地内の配管が壊れている」と言われ、業者に修理を頼むよう説明を受けた。
 女性が市内の業者に電話すると「100軒以上が順番を待っていて、2カ月はかかる」との回答。なんとか知り合いに頼んで、水を使えるようになった。「水が出ないと地獄。周りは順番待ちの話ばかり」

 ◆配管の修理「先を読めない」

 市上下水道局によると、市内の水道復旧率は13日時点で58%。この値は各戸の水道メーターまで水が届いた割合で、実際に蛇口から水が出る割合は不明だ。
 行政が管理する道路下の水道管は、全国の自治体職員の応援で、少しずつ復旧が進む。一方の民家敷地内の配管は私有地にあるため、行政の管轄外。復旧工事を行政が直接手がけることはできないという。
 市内のある業者は「配管工事がすぐ終わる時もあれば、2〜3日かかる時もあり、先を読めない。仮設住宅の仕事も多く、手が回らない」と明かす。避難先からの帰宅を検討する人からの問い合わせも増え「今後はさらに順番待ちが長引くかも」と話した。(森田真奈子)
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 ◆復旧工事を阻む「倒壊家屋」の問題も

 輪島市は一時、ほぼ全域で断水した。一部を除き3月末までの解消を目指すが、漏水箇所や水を止めるバルブの上に倒壊家屋があると、水道管の復旧工事ができない。断水が長期化する恐れがある。
 同市小伊勢町の男性(72)宅がある住宅地では、倒壊家屋の残がいが道をふさぎ、その辺りの管で漏水しているとみられる。同じ町内の100メートルほど離れた一画では復旧したのに、男性宅は断水したまま。「もう慣れたけど、やっぱり早く通ってほしい」
 倒れた家などがインフラ復旧や緊急車両の通行の支障となる場合、自治体は建物所有者の了解を得て、残がいを敷地内に戻す。相続人不明の空き家や、所有者が避難して連絡がつかない場合は戻せない。市によると、こうした場所は5日時点で101カ所。市災害対策本部の担当者は「工事ができないと、ずっと復旧できないことになる」と頭を抱える。

 ◆通水すると、地面から音を立てて漏れ出した

 石川県穴水町は今月1日に断水が全域で解消したと公表し、自衛隊などの給水支援も4日に終わった。だが、町中心部の給水所には今も、住民がタンクやバケツを持って訪れる。
 同町比良の自営業女性(57)は自宅敷地内の配管が壊れ、水が使えない。2月下旬に自宅前まで通水し、水を流そうとすると、地面から「ジャー」という音とともに水が漏れてきた。知り合いの業者に修理を頼んだが「いつ来られるか分からない」。食器洗いの水を毎日くみ、自衛隊の入浴支援やコインランドリーでしのぐ。
 町などによると、民家敷地内の配管の修理は全額自己負担。支援のため国の応急修理制度があり、水道や屋根、壁など生活に最低限必要な部分の修理を、上限金額内で行政が担う。(川添智史、小林大晃)
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