[2019_04_17_06]廃炉専業会社、設立検討 原電が国内初 米社出資も(東京新聞2019年4月17日)
 
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廃炉専業会社、設立検討 原電が国内初 米社出資も

 原発専業の卸電力会社、日本原子力発電(東京)が国内初の廃炉専業会社の設立を検討していることが十六日、分かった。原電は米国の廃炉専業大手、エナジーソリューションズと提携関係にあり、新会社は出資受け入れも想定している。今年中に最終判断をする。
 原電は東京電力福島第一原発事故前から始めた廃炉作業の経験を生かし、東電など大手電力に安全な手順や費用の低減を提案する「廃炉支援」で収益を得る。今後は多くの原発が廃炉になる時代に入る。新会社を軸に人材を育成し、原発メーカーや建設会社を巻き込んだ廃炉の支援態勢を整える。
 大手電力や原電は原発の新規制基準が導入されてから、福島第一原発を除き、七原発十一基の廃炉を決めた。さらに東電は福島第二原発の四基の廃炉方針を示した。
 原発は出力百万キロワット級だと一基当たり約五十万トンの廃棄物が発生し、このうち約2%が放射性廃棄物だ。廃炉には三十年の期間と約五百億円の費用がかかるとされる。作業員の被ばくや放射性物質の飛散を防ぐことが最大の課題で、効率を上げて無駄な費用を抑え、作業期間を長期化させないことも求められる。
 原電は二〇〇一年、東海原発(茨城県)で商業炉初の廃炉作業を始め、現在は熱交換器など放射線量の比較的低い設備の解体をしている。一七年には敦賀原発1号機(福井県)の廃炉に着手しているほか、福島第一原発の廃炉に社員を派遣するなどしている。原電は新会社に廃炉作業の経験のある社員を集める考えだ。
 米エナジーソリューションズは〇六年の設立以降、米国内の原発五基の廃炉を手掛けた。一〇年に始めたイリノイ州のザイオン原発の廃炉は間もなく完了する。原電はザイオン原発に社員を送り込むなどして放射性廃棄物の処理技術や廃炉の工程管理を習得している。

◆存続懸け新ビジネス 売電収入ゼロ

 日本原子力発電が存続を懸け、廃炉ビジネスに本格的に乗り出す。東京電力福島第一原発事故以降、原発専業の原電は「売電収入ゼロ」という異常な経営が続く。年内に最終判断する廃炉新会社の設立が局面打開につながるのか。国内外で行き詰まる原発産業全体の行方を占う試金石となる。
 原発事故後、国の審査に合格し、再稼働した商業用原発は全国で五原発九基。廃炉を決定・表明したものを除いた残る二十四基は、いずれも安全対策工事が長引いたり立地自治体の同意が得られなかったりで、年内の再稼働を見通せる原発は一つもない。政府が昨年閣議決定したエネルギー基本計画には、世論の反発を懸念して、原発の新増設が盛り込まれなかった。
 原発以外に収益源のない原電の苦悩はとりわけ深い。東海第二原発(茨城県)は再稼働に向け国の審査を通り、最長二十年の運転延長も認可されたが、地元の同意取り付けが難航。安全対策工事費は「三千億円規模に膨らむ見通し」(電力関係者)だが、頼みの綱の大手電力による支援枠組みはいまだ固まっていない。
 敦賀原発2号機(福井県)は直下に活断層の存在が疑われ、審査合格のめどが立たない。本業の収入を絶たれ、売電契約を結んでいる大手電力五社から受け取る総額年一千億円の「原発管理費」を頼みに食いつないでいるのが実情だ。
 現在も廃炉ビジネス自体は手掛けるが「収益への貢献は微々たるもの」(関係者)にとどまっている。新会社設立を足掛かりに国内の廃炉支援を一手に請け負い、安定した収益を稼ぐ構想を描く。

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