[2019_09_03_05]破綻しつつある!アルプス(多核種除去設備)処理水問題 原子力市民委員会提案の汚染水を入れる 大型タンク(10万トン)の導入を支持する 石丸小四郎 (双葉地方原発反対同盟)(たんぽぽ舎2019年9月3日)
 
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破綻しつつある!アルプス(多核種除去設備)処理水問題 原子力市民委員会提案の汚染水を入れる 大型タンク(10万トン)の導入を支持する 石丸小四郎 (双葉地方原発反対同盟)

◎ 12月8日、東電は「汚染水をためるタンクが3年後には満杯になる」の見通しを明らかにした。翌日、各紙は一斉に報道した。
 この問題の背景にあるものを探った。
 第一原発で汚染水浄化後に残る放射性物質トリチウムを含む水の処理方法を議論する政府小委員会の山本一良委員長(名古屋学芸大副学長)は3日、同原発を視察し、長期保管を前提とした議論を9日から始める考えを明らかにした。

◎ 東電はそれにあわせる形で様々な発言をしている。
 それは次のようになる。
1.トリチウム保管タンクは現在、約115万トンである。
2.1日当たりの発生量約170トン(2018年並み)とした場合、2022年夏頃まで137万トンになり満杯になる。
3. 2016年政府の作業部会がまとめた報告書「海洋放出、地層処分、水蒸気放出、地下埋設」の5つの選択肢の他に「長期保管」は廃炉作業が困難になる可能性があり難しい。
4.昨年、公聴会で出された案「10万トン大型タンクなどに置き換える方法も、破損した場合、漏洩量が莫大になる可能性があり困難である。保管場所もない。
5.中期保管を続けた場合、許認可手続き、工事など年単位の準備期間が必要であり難しい。従って「海洋投棄以外に選択肢はない」が結論だと主張したかったのだろう。

◎ ところが、原子力規制委員会が第一原発の廃炉作業を監視するための会議、第72回・特定原子力施設監視・評価検討会の場で次のようなやり取りがあった。

・規制庁〜多核種除去設備等処理水の説明をして欲しい。
・東電〜2018年度に行った62核種の詳細分析の結果、不明核種である「C−14」(カーボン14)「Tc−99」(テクニチウム99)が有意に検出された。原因は吸着剤の性能低下にあると判断している。
 アルプス処理水処分に当たり、環境放出する場合は二次処理(再処理)を実施することとしている。
以上のように、新たに不明核種、カーボン14とテクネチウム99が見つかった。

◎ 更に…・東電〜今後、タンク群を分析する場合はカーボン及びテクネチウムを含めて9核種について全てタンクごとに分析し確認してまいりたい。
・規制庁〜放射線について我々が専属チームを結成し本件調査が始まった。東電の測定は十分でなかった!今後、何か対応策を考えているのか?
・東電〜現在、JAEA(注2)の協力を得て人材育成計画、人材確保を行っていきたい。
・規制庁〜今年1月にタンクの調査を行うように言ってから5ヶ月もかかっている。凄く測ることに時間がかかるということなのか?
・東電〜専門的知識が必要になる。それが出来る人間は非常に限られた人物になる。一つのタンクを分析するのに2〜3週間を要しているのが現状である。
・規制庁〜すぐに出来る人物を呼んできてもらうということをやって欲しい。
・東電〜カーボン、テクネチウムの測定については即・出来る人間を教育して増やすようにして行きたい。
・規制庁〜カーボン、テクネチウムの他いろいろ混ざっている可能性があるのでは…東電の測定が正しいんだろうか?そういう疑念が沸いてくる。
・東電〜出来ることと出来ないことをきっちり整理して、出来ることからやっていきたいと思っている。
・資源エネ庁〜地元の皆さんが(県民が?)非常に高い関心を持っていることを考え、人員が不足したらそれを理由にせず、しっかりと対応してもらいたい。

◎ 少し長くなったが、多核種除去設備等処理水の東電と規制庁のやり取りを掲載した。
 ここで出された問題点を整理するとこうなる。

イ.原発敷地内にあるタンク群960基の「トリチウムしか残っていない」と言われた代物が様々な核種が混在していることが判明した。更に、毎日発生する170トンも同様である。
ロ.東電のこの問題にたいする対応が、測定人物、人材が枯渇し、JAEAに応援を頼んでも有効な対策が出来なくなっているとみられる。
ハ.東電はトリチウム以外の核種についてデータを公表していないがアルプス処理水(核種除去設備等処理水)処分それ自体が破綻していると見なければならないのではないか?山本委員長が「長期保管を求める県民の声に沿う姿勢を示した」という報道もここから出ているのではないかと判断する。
 私たちは、既報No198(2018.6.20)で原子力市民委員会(脱原発社会へ向けた政策を提案するシンクタンク)が福島県に提案した汚染水を入れる大型タンク(10万トン)の導入を支持している。場所も十分ある。

◎ このたび「東電福島第二原発廃炉!」が実現した。
これは「原発はもうたくさんだ!」の県民の圧倒的な声に耐えられなかったからであろう。
「放射能汚染水を海に捨てるな!」の声も同様である。 今年4月、世界貿易機構(WHO)が福島県等の水産物を輸入を禁止する韓国の措置を容認したことも追い打ちをかけたとみる。以上のように民意の圧倒的な声こそ力である。

※注2:原子力に関する研究と技術開発を行う国立研究開発法人、人材育成計画、人材確保などおこなっている。

(「脱原発情報」2019.8.20「双葉地方原発反対同盟」発行 No212より 了承を得て抜粋)
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