[2020_12_11_13]むつ中間貯蔵 共用検討 燃料保管「特効薬」なく 原発プール逼迫、白羽の矢(東奥日報2020年12月11日)
 
 むつ市のリサイクル燃料貯蔵(RFS)使用済み核燃料中間貯疑施設を、原発を持つ10社が共同利用を検討していることが明らかになった。背景には、各原発にたまり続ける燃料の保管場所確保が困難な状況がある。各社はこれまで、日本原燃・六ケ所再処理工場(六ヶ所村)に燃料を送り出すなどして原発プール内の貯蔵量を抑えてきたが、再処理がいまだ実現しない中、容量が限界に近づく原発も増えた。再稼働を見据え各社は保管・貯蔵対策を急ぐが「特効薬」は見当たらない。そこで、既に安全審査を終え、操業開始が現実味を帯びる、むつ市の施設に白羽の矢が立ったとみられる。   (加藤景子、安達一将)

 原子力発電が始まって半世紀余。使用済み核燃料は原発にたまり続けてきた。日本はこれまで、英仏両国に再処理を委託、計約7100トンを処理したが、全国の原発と再処理工場のプールで保管されている燃料は2020年3月時点で計約1万9千トンに上る。
 対応に追われる各電力の中で、特に状況が逼迫しているのが関西電力だ。関電は福井県に美浜、大飯、高浜の3原発を抱えるが、運転開始から40年を超える美浜3号機、高浜1、2号機の再稼働同意の条件として、県から年内に燃料の県外搬出先を示すよう求められていた。
 東京電力福島第1原発事故を経て多くの原発が長期停止する中、再稼働が進む関電の原発は、業界にとって重要拠点とされ、何としても県の同意を取り付ける必要がある。
 共同利用の標的にされたむつ市の施設にも他電力受け入れの余地があった。RFSの親会社の東京電力ホールディングス、日本原子力発電の原発は、審査合格に至っても地元同意が進まず停止を余儀なくされている。福島第1、第2原発は廃炉となり、東電、原電の両社が各原発から燃料を運び出す緊急性は薄らいでいた。共同利用が実現すれば、既に完成したRFSの1棟目(約3千トン)に続き2棟目(約2千トン)の建設に大きく前進。結果的に業界を取り巻く課題は解消される。
 本県における電力一体となった取り組みには布石があった。近年、本県をエリアとしていない電力各社が県内に事業所やコールセンターを構える動きが相次いだ。今年6月には北海道、中部、関西、中国の4電力によるコールセンターが本格運用を開始。一連の動向について、関係者は「核燃料サイクル施設を抱える本県への地域振興策」とするが、地ならしとなる可能性は否めない。
 ただ、施設貯蔵後の搬出先など期限を見据えた議論は現時点で進んでいない。本県に燃料がたまり続ける現状にさらに拍車を掛けることにもなり、地元の理解が得られるかは未知数だ。
KEY_WORD:MUTSU_RECYCLE_:FUKU1_:MIHAMA_:ROKKA_:TAKAHAMA_:廃炉_:OOI_:FUKU2_: