[2021_07_31_01]中国台山原発の危険性は 中国の原子力運営能力は 燃料損傷でも運転継続(上)(2回連続) チェルノブイリ原発事故の教訓 日本の事故の教訓 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2021年7月31日)
 
参照元
中国台山原発の危険性は 中国の原子力運営能力は 燃料損傷でも運転継続(上)(2回連続) チェルノブイリ原発事故の教訓 日本の事故の教訓 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

◎ チェルノブイリ原発事故の教訓
◎ 日本の事故の教訓・福島第二原発3号機
◎ 福島第一原発事故の教訓 (下)
◎ 中国の燃料損傷と運転継続 (下)

 中国が、およそ理解出来ないことをしている。
 中国台山(タイシャン)原発の運転継続判断だ。
 電気出力166万kW、EPR(欧州型加圧水型軽水炉)で、アレバ社が開発した第三世代原発。
 コアキャッチャー等の過酷事故対策を行ったことで、現在世界で最も安全性が高いと宣伝している。
 しかし通常運転時の管理が悪ければ、安全性を高めた炉でも、過酷事故を引き起こさない保証はない。
 過酷事故を防ぐためには、設計、施工上の対策はもちろんのこと、運営時の安全性確保はさらに重要なファクターである。

◎ チェルノブイリ原発事故の教訓

 1986年に最大級の事故を起こした旧ソ連チェルノブイリ原発事故は、当時最新鋭のRBMK(黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉)として1983年に運転を開始した。
 この原発が爆発する前には、安全性強化を施したチャンネル式ということで、一体型の炉心で構成される欧米型軽水炉に比べ出力部分を分散しており、炉心溶融や燃料損傷に強く、西側炉とは一線を画する安全性を有すると宣伝され、日本の原子力関係者も一定の評価を与えていた。
 1986年4月26日未明、この原発の原子炉停止時の安全確認試験をおこなっていたところ、出力が急上昇して燃料を加熱破損させ、それが引き金になりチャンネル炉の燃料体が連鎖的に爆発、火災並びに炉心溶融を引き起こした。
 この実験、原発が運転を止めていく際に、タービンの回転惰性で継続して発電機を回して電力を供給、給水ポンプなどを駆動するというものだった。
 これは、何らかの原因で外部電源が喪失してから、非常用ディーゼル発電機へと切り替わるまでの繋ぎ電力として期待されていたものだった。
 この実験の際に、極めて低い出力で原子炉を長時間維持したため、炉心が不安定になって急激な出力低下を引き起こし、それに対して運転員が安全保護設備(スクラム回路)を無効化するなど、いくつもの規則違反を行って制御棒を引き抜き、炉心を暴走させた。
 この原子炉は、制御棒を挿入する際に、最初出力を増大させる動きをする欠陥を持っていたが、ソ連当局は運転管理で回避できるとして、重大視してこなかった。
 「設計上の安全管理」は、運転管理の逸脱で破綻してしまうことを実証した。

◎ 日本の事故の教訓・福島第二原発3号機

 チェルノブイリ原発事故の後の1989年1月、今度は日本の原発で同様の事態が発生した。
 福島第二原発3号機(既に廃炉)は、1988年末から再循環ポンプの不規則な振動を観測していた。
 このままでは振動が大きくなり原発を止めなければならなくなるとして、ポンプの回転数を下げることで振動を回避してきたが、1月1日になって更に振動が大きくなり、ついに6日には原子炉を止める決定をした。定期検査入のわずか3日前の出来事であった。
 この時は昭和天皇が死去寸前の「昭和の終わり」の混乱と、定期検査入まであとわずかというタイミングが重なり、東電の運転継続意識が高かったと考えられる。
 後に再循環ポンプを分解してみたところ、直径1メートルの水中軸受リング部(ポンプの運転により生じる水圧の変動が軸受部に伝わって漏洩するのを防止する整流防水板)が軸受本体との溶接部分で破断、脱落し、高速回転する羽根車と接触して欠損、摩耗していた。
 また、羽根車とリングの接触によって生じた金属片等が約33キログラムも炉心にまで流れ込み、燃料棒に突き刺さるものもあり、全燃料の交換と設計変更による再循環ポンプの改造と補修などに長期間を有した。
 幸い、炉心損傷などには至らなかったが、再循環ポンプ部分で配管やポンプ本体が破断したら大LOCA(大容量冷却材喪失事故)、燃料破損が進行すれば炉心内に大量の核分裂生成物が入り込み、冷却材汚染から放射性物質の放出事故、燃料への浸水や破断が起きれば部分的核燃料溶融または燃料破断による水蒸気爆発事故が起こりかねなかった。
 この事故で、全ての沸騰水型軽水炉の再循環ポンプが点検の対処になり、3号機と同様の欠陥を持っていたポンプは全て対策品に交換された。
 また、ポンプ振動警報が発生した場合は、保安規定内でも停止点検をするよう手順書が改められた。
(下に続く)
KEY_WORD:中国原発_放射性ガス放出_:FUKU2_: