[2016_09_03_04]仏原発で強度不足疑惑 疑いの業者 国内13基製造 電力6社 規制委に報告、調査へ 「影響考えにくい」専門家(東奥日報2016年9月3日)
 
 九州電力や東京電力、関西電力など電力6杜は2日、フランスの原発で強度不足の疑いがある重要設備を製造した大型鋳鋼品メーカー「日本鋳鍛鋼」(北九州市)が、稼働中の九電川内原発1、2号機(鹿児島県)を含む国内8原発13基の原子炉圧力容器を製造していたと原子力規制委員会に報告した。
 6社は10月末までに強度に問題がないかなどをそれぞれ調査し、規制委に報告する。重大な強度不足が判明すれば、原発の運転や再稼働時期に影響する可能性もあるが、規制委事務局の原子力規制庁の担当者は共同通信の取材に「フランスでも実際に強度不足が確認されたわけではなく、あくまで念のための調査だ」と述べた。九電は、川内J、2号機への対応を「運転を止めず、メーカーに確認する」とした上で、強度不足が判明した場合の対応については「仮の話なので答えられない」とした。
 日本鋳鍛鋼は取材に「規制委から要請があればいつでも調査を受ける」と回答。「強度不足につながる鋼材の不純物は顧客の指示通り切り捨てている」として強度基準を満たしているとの認識を示した。
 電力各社によると、日本鋳鍛鋼はほかに、東電福島第2原発2、4号機(福島県)、北陸電力志賀1号機(石川県)、関電高浜2号機(福井県)、大飯1、2号機(同)、日本原子力発電敦賀2号機(同)、四国.電力伊方2号機(愛媛県)、九電玄海2、3、4号機(佐賀県)のいずれも原子炉圧力容器を製造していた。
 この問題を巡っては、フランスの規制当局が6月、同国内で運転中の原発18基の重要設備に強度不足の疑いがあり、調査を進めていると発表。設備は日本鋳鍛鋼と同国の「クルゾ・フォルジュ」が製造していた。

 県内原発は対象外

 フランスの原発で重要設備に強度不足の恐れが出たことを設け、県内に原発を立地・建設中の東北電力、電源開発(Jパワー)、東京電力ホールディングスは2日、調査結果を原子力規制委員会に報告した。問題となったメーカーは県内原発の設備製造に携わっていなかった。
 東北電東通原発1号機(東通村)など県内原発の圧力容器は国内の別メーカーが製造していた。ただ、強度に問題がないかなどを10月末までにそれぞれ調査し、改めて規制委に報告する。
     (阿部泰起)

「影響考えにくい」専門家

 フランスの原発で強度不足の疑いが指摘されたメーカーが、日本国内の原発でも原子炉圧力容器などの重要設備を製造していたことが発覚した。電力各社は実際に設備の強度に問題がないか確認を急ぐが、専門家からは「日本の厳しい検査体制を考えれば、直ちに原発の運転に影響を及ぼす可能性は考えにくい」との声が聞かれる。
 原子力規制庁の担当者は2日、「フランスでも実際に強度不足が確認されたわけではなく、あくまで念のための調査だ」と強調した。
 規制庁によると、圧力容器など原発の重要機器については福島第1原発事故以前から、一定の強度や化学組成が規制基準により求められている。原子力規制委員会は、運転前に実施する使用前検査で、機器に使用された部材が定められた成分となっているかどうかを、電力会社やプラントメーカー側が提示する製造記録や分析結果を基に確認しているという。
 北海道大の奈良林直・特任教授(原子炉工学)は「日本では機器の強度や劣化状況について、福島事故以前から厳しい検査体制を取ってきた」と指摘。強度不足の可能性が指摘された機器の箇所などが不明で判断は難しいとしながらも、「本当に強度が不足していれば、過去の検査で発見されるはずで、大きな影響があるとは考えにくい」との見方を示した。
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