[2020_04_27_03]「20メートル津波」論文を除外 政府想定 猿ケ森砂丘(東通)に痕跡(東奥日報2020年4月27日)
 内閣府が21日に公表した北海道−千葉県の太平洋岸を襲う最大級の津波想定で、東北電力東通原発(東通村)の約10キロ北にある「猿ケ森砂丘」で海抜約20メートルの津波の痕跡を報告した論文が「水位が高すぎる」と疑問視され、考慮の対象から外されていたことが26日、分かった。専門家からは「砂丘は地形が変わりやすく過去の津波の復元は難しい。高さ20メートルは否定しきれない」との批判が出ている。
 内閣府の想定では、東通村の津波の最大高さは13・9メートルで、海抜16メートルの防潮提がある東通原発は浸水しないとされた。
 箕浦幸治東北大名誉教授らが2013年に発表した論文などによると、海岸から約1・5キロ内陸の猿ケ森砂丘で数百年前の津波が残した砂や泥、倒木を確認し、既存の論文などからこの地点の高さを海抜20メートルと判断。津波がさらに高くに及んだ可能性も指摘した。
 東北電は17年の原子力規制委員会の審査で「誤差がセンチ単位の精密測量では高さは約11メートル。論文の20メートルは誤り」と説明。原発で想定する津波は高さ11・7メートルとした。東北電によると、海寄りの砂丘は防衛装備庁の敷地で入れず、海面ではなく内陸の水準点を利用して高さを測量した。
 内閣府は公表データから想定を作った。集めた211の論文や報告書などのデータのうち、箕浦氏らの論文は「周辺の痕跡と比べて高すぎる」と外した半面、東北電などのデータは考慮された。
 内閣府の横田崇政策参与は「詳細は確認していないが、20メートルを再現しようとすると、より大きな津波になり、他の痕跡との整合性が取れない」と説明。これに対し、ある研究者は「昔の津波の水位を精度よく知るには、もっと詳しく現地の地形などを調べないといけない」と指摘している。
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