[2022_03_29_05]社説 日向灘の巨大地震 リスク重視し備えに生かしたい(愛媛新聞2022年3月29日)
 
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社説 日向灘の巨大地震 リスク重視し備えに生かしたい

 政府の地震調査委員会が、宮崎県沖の日向灘や、鹿児島から沖縄にかけての南西諸島で、マグニチュード(M)8級の巨大地震3タイプが起きる危険性があると新たに指摘した。
 公表されたのは30年間の「長期評価」で、データが足りず具体的な確率は出せなかった。不確実さは残るが、最新の研究や知見に基づく警告であり、重く受け止めたい。
 日向灘の地震は、巨大地震が想定される南海トラフに影響が及ぶ可能性が高いという。愛媛でも新たなリスクとして頭に入れ、自治体や家庭などの備えに生かす必要がある。
 調査委は2011年の東日本大震災を受け、04年版の長期評価を改定。日向灘―南西諸島周辺には、海と陸のプレート境界の南西諸島海溝(琉球海溝)がある。掘削調査や記録の再検討を行い、江戸時代以降3度、巨大地震が起きた可能性が高く、将来繰り返されると想定した。
 一方、今回の長期評価は発生の仕組みや確率など不明な点が多い。それでも公表した背景には震災の教訓がある。
 岩手や宮城では江戸以降に大津波が繰り返されたが、震災前はあれほどの巨大津波は想定されていなかった。調査委内部には、このエリアの長期評価を改定する計画もあったが間に合わなかった。反省を踏まえ、将来の危険性を伝えることを優先したのは妥当だろう。
 現時点で把握できているのは過去400年間足らずの地震。専門家はもっと昔により大きな地震が起きていた可能性を指摘し、調査委も今回の想定を上回る地震があり得るとする。今後さらに調査を進め、予測の精度を高めてほしい。
 日向灘は南海トラフ巨大地震の想定震源域に含まれ、日向灘から地下の破壊が進んでドミノ倒しのように巨大化する恐れがある。M6・8以上があれば、気象庁は「南海トラフ地震臨時情報」を出し、有識者検討会を緊急開催する。
 四国電力は、臨時情報が出ても伊方原発(伊方町)の安全性に影響はないとの立場だ。新たな長期評価に関しても、地震動や津波評価は日向灘を含む南海トラフ巨大地震の想定を用い、既にM8・0以上の規模を反映させているとする。
 ただ地震や津波に見舞われた東京電力福島第1原発事故の影響は今も続き、原発の信頼性は回復していない。長期評価が安全性に与える影響を精査し、改めて説明すべきだ。
 16日に宮城・福島で震度6強を観測したM7・4の地震は、陸の下に沈み込む太平洋プレート内で起きたとみられる。調査委は太平洋プレート内での地震について、今後30年での発生確率を最も高いランクとし、警戒を呼び掛けていた。
 死傷者に加え、住宅やインフラに甚大な被害が出ている。福島第1など原発でも対応に追われた。M8級への備えに十分ということはない。
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