[2023_10_05_08]原発を止めた元裁判長「無知は罪、無口はもっと罪」 岸田政権2年(毎日新聞2023年10月5日)
 
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原発を止めた元裁判長「無知は罪、無口はもっと罪」 岸田政権2年

 07:00  
 4日で就任2年となった岸田文雄首相は「原発回帰」に前のめりだ。次世代原発へのリプレース(建て替え)や既存原発の60年超運転を認める方針を決め、原発再稼働も推し進めている。それでいいのだろうか。「3・11」以降で初めて原発運転差し止めを命じた福井地裁の元裁判長、樋口英明さん(71)を取材すると「無知は罪、無口はもっと罪」という言葉が飛び出した。【國枝すみれ】

 南海トラフ地震への危機感

 ――岸田政権の2年間に点数を付けるとすれば何点ですか?
 ◆マイナス100点です。(原発を廃止できなかった)これまでの政権が0点。岸田政権は原発の大幅な拡大を決定したのですから、点数はそれより悪くならざるを得ません。

 ――樋口さんが7月に出版した「南海トラフ巨大地震でも原発は大丈夫と言う人々」は危機感であふれています。原発回帰の何が問題なのですか?
 ◆原発の特徴は、人が常に管理しないといけない、管理できないと取り返しのつかない事故になるという点です。近く必ず来るとされる南海トラフ地震の想定震源域には、四国電力伊方原発(愛媛県)と中部電力浜岡原発(静岡県)があり、伊方原発は既に稼働しています。
 四電は地盤が固いことなどを理由に、南海トラフ地震が伊方原発を直撃しても181ガル(ガルは地震の強さを示す加速度の単位)を超える地震動は来ない、原発の耐震設計基準(基準地震動)である650ガルを超える地震動も来ないと主張しています。
 181ガルは震度5弱、まれに窓ガラスが割れて落ちる程度に相当します。阪神大震災以降にできた地震観測網のおかげで、2000年からの20年間で、181ガルを超える地震動を引き起こした地震が全国で180回あったことが分かっています。
 住民は運転差し止めの仮処分を広島地裁に申し立てましたが、認められませんでした(広島高裁も23年3月、住民側の即時抗告を棄却)。裁判所は「何ガルの地震が伊方原発にくるのか住民側で立証せよ」と迫ったのです。
 結論ありきの決定だと言わざるを得ません。政府も、原子力規制委員会も、電力会社も、そしてあろうことか裁判所までが国民を守る責任を放棄しています。

 住宅より耐震性の低い原発

 ――福井地裁の裁判長だった樋口さんは14年、関西電力大飯(おおい)原発3、4号機(福井県)の運転を差し止める判決を出しました。
 ◆裁判を担当する前は、原発問題にさほど関心はありませんでしたが、かなり安全なのだろうと思っていました。しかし、そうではなかった。
(後略)
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