[2023_08_02_03]原子力規制委の長期管理施設計画パブコメ締め切り間近(8/4まで) 老朽化原発の安全性確保の理屈は成り立つのか 危険な原発を止めさせるためにあらゆる努力を 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2023年8月2日)
 
参照元
原子力規制委の長期管理施設計画パブコメ締め切り間近(8/4まで) 老朽化原発の安全性確保の理屈は成り立つのか 危険な原発を止めさせるためにあらゆる努力を 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 
◎「パブリック・コメント」を出そう

 「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則等の改正案等に対する意見公募について」という長い長い名前のパブコメが実施されている。
 締め切りは8月4日中。従って、もう時間はほとんど無い。
 対象としている文書は次の3つ。
1.「GX脱炭素電源法附則第4条第6項の規定により納付すべき手数料等の額を定める政令(案)(概要)」
2.「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則等の一部を改正する規則(案)」
3.「実用発電用原子炉の長期施設管理計画の審査基準(案)」
 このうち重要なのは「実用発電用原子炉の長期施設管理計画の審査基準」である。

◎パブコメの趣旨

 GX脱炭素電源法案(というより原発推進法だ!)の中でも原子力規制委員会所管の「老朽原発管理計画」についての意見募集である。
 原発の「利活用」の視点から、現行の原発の運転期間を原子炉等規制法から電気事業法に移し、さらに40+20の60年運転制限を、「新規制基準適合性審査を受けていた期間」などと名目を付けて最低でも4年、長ければ事実上無限に期限を引き延ばすことを可能とした法令改正が、5月31日に国会を通っている。
 しかし具体的にどのような理由で期限を延長するかは明確になっていない上、それを決めるのは「規則、省令」である。

 このように「原発依存からの脱却」ならぬ「原発依存への転換」を決めた法令の中に、原子炉等規制法の改訂があり、そこで「実用発電用原子炉の長期施設管理計画の審査基準」がある。
 期間ではなく経年劣化の度合いで運転を許可するかどうかを決めるのが規制の仕事、という名目で制定される「新しい」規制基準、つまり「新新規制基準」だということだが、実態は今まで行ってきた「高経年化技術評価」とほとんど変わらないのである。
 これを規則から法令に「格上げ」し、認可されなければ運転ができなくなるとの新たな規制をかけることで原発の安全性を保証するとの触れ込みだ。
 では、本当にそうなっているのか。
 それが、今回のパブコメの主要な点だ。

◎「長期施設管理計画の審査基準」の問題点

 「実用発電用原子炉の長期施設管理計画の審査基準の制定について」では、次のようなことが定められている。
 30年を経過した原発は、10年毎に事業者が長期管理計画を決めて規制委に提出しなければならない。

 長期管理計画には、
 1.通常点検及び劣化点検の実施の考え方及び方法が適切に定められていること、
 2.技術評価に用いる点検等の結果が明らかにされていること、
 3.劣化の状況を把握する点検又は検査がない場合には、劣化点検を実施しなくとも技術評価が可能であることが示されていること、
 4.将来の劣化の予測・評価をどのように行うかの予測と評価の結果が示されていること、
 5.劣化を管理するための具体的な措置が示されていること。が記載されなければならない。

 しかしこれで原発の事故を未然に防ごうというのは、言うは易く行うのは困難だ。
 例えば、投棄管理計画において劣化を確認し基準への適合性を立証する責任は事業者に課せられている。それをクリアできなければ運転はできなくなる。
 しかし適合性を審査し、判断する規制委が事業者の見落としや不適話などを審査等で未然に見つけ出す能力が無ければ、この規制は機能しない。
 そのような技術的能力があるのかは、これまで実証されたことはない。
 実際の審査会合においても、規制側にそのようなことができるのか、疑問の声が委員から上がっていたのである。

 原発は極めて複雑な構造物であり、全部の専門家などはいない。金属材料やポンプなどの専門知識があっても炉物理の専門ではないとか、地震について知見があっても津波はまた別とか、とても5人の委員で審査をこなすなど難しいと誰もが思うのではないか。

◎未知の劣化を調査する方法が定められていない

 劣化評価については、原発の全部を見ることが出来ないため「主要6事象の管理」が中心だとしている。
 これは、
 1.中性子照射脆化、
 2.低サイクル疲労、
 3.照射励起型応力腐食割れ、
 4.2相ステンレス鋼の熱時効、
 5.電気・計装品の絶縁低下、
 6.コンクリート構造物に掛かる強度低下及び遮蔽能力低下だ。

 しかも、中性子照射脆化から2相ステンレス鋼熱時効までは運転していないと進行しないと決めつけている。だから運転期間について長期停止期間の除外ができるとしている。
 しかし劣化の進行はこれだけではない。
 個々に定められたものの多くは、建設時から交換できない構造物の劣化を想定している。

 中性子照射脆化と照射励起型応力腐食割れは圧力容器、2相ステンレス熱時効は圧力容器に接続されている主要配管、電気・計装品は交換不可能な古いケーブル、コンクリートは建屋そのものだ。
 しかし交換可能であるとしても、毎定検時に全部交換するわけではない。
 例を挙げると、交換可能といっても交換工事に何年もかかる蒸気発生器(PWR)や炉心シュラウド(BWR)など、運転期間中に一度変えられるかどうかという装置もある。
 こうしたものは劣化評価が正確でなければ運転中に破断したりする危険性があり、そうなると炉心溶融に直結する事故になる。

◎設計の古さをどうやって管理するのか

 原発の建設は主に1970〜1980年代がピークだった。多くは1960年代に設計されたものである。航空機ならばボーイング747と同時代。今年生産を終了したので、異例の長寿命だった。
 同時代の原発をまだこれから運転しようという。現在運転中の高浜原発1号機は推定2056年まで。こんなハイリスクな国は他にはない。

 日本の原発は、全て海岸立地であるうえ、地震の影響を強く受けてきている。
 重大な損傷を受けた柏崎刈羽原発など論外としても、目立った被害のない原発でも揺れにより蓄積された疲労や地盤のずれなどが起きている可能性はある。
 そのうえ、地震想定つまり基準地震動は初期の原発は270ガル(東海第二)や370ガル(高浜1・2)などとして建設されている。その当時、大きな地震に襲われるという発想そのものが無かったのである。
 現在は、1009ガル(東海第二)や700ガル(高浜)である。

 しかし高浜とほど近い大飯では856ガル、美浜では993ガルとしており、その違いはかなり大きいが、それが何なのか。疑問である。
 このように古い原発は低い地震想定で建てられているため、新規制基準適合性審査を受けるために耐震補強を繰り返してきた。これはつぎはぎだらけといえる。
 運転期間制限の40年(+20年)という基準は、こうした古い設計で現代の評価では失格する原発を退場させるために2013年に炉規法改正でわざわざ設定したものである。それを勝手に書き換えるなど許されるものではない。

◎再度、パブコメを出そう

 パブコメで法改正を止めるということはできないかもしれない。
 しかしこうした規定が私たちの反対の声もなく通ってしまうことは害悪だ。少なくても今後法令改正を実現し、改めて原発をなくす取り組みを続けるならば、パブコメを通して反対の声を届けるべきだ。
 以下のURLから、8月4日中までに、是非意見を送ってほしい。

 実用発電用原子炉の長期施設管理計画の記載要領(案)に対する意見公募について
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=198023204&Mode=0
KEY_WORD:原発_運転期間_延長_:KASHIWA_:TAKAHAMA_:TOUKAI_GEN2_:OOI_: MIHAMA_: