[2023_11_21_04]核燃料仮置き場、青森県むつ市では「永久貯蔵」化に懸念…「原始から原子の時代に」期待も(読売新聞2023年11月21日)
 
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核燃料仮置き場、青森県むつ市では「永久貯蔵」化に懸念…「原始から原子の時代に」期待も

 16:26
 山口県上関町で、使用済み核燃料を原子力発電所の敷地外で一時保管する中間貯蔵施設の建設に向けた調査が近く本格化する。町は調査結果を待って建設の是非を判断する。国内初の施設を受け入れた青森県むつ市の現状を通して、その課題を探る。

 殺風景

 広大な原野に、巨大な構造物は立っていた。高いフェンスと鉄条網で囲われた、原発から生じる使用済み核燃料を保管する中間貯蔵施設だ。
 中核となる「貯蔵建屋」に9月、記者が入った。放射線を遮断する分厚い鉄筋コンクリート造りで、高さ約30メートル、幅約60メートル、奥行き約130メートル。屋内はがらんとしていた。「倉庫なので難しい設備はありません。殺風景でしょう」。運営会社「リサイクル燃料貯蔵」の安藤達也・地域交流部副部長が施設を説明した。
 計画によると、施設には、金属製の収納容器「キャスク」に入れた使用済み核燃料を津軽海峡に面した港から約1・5キロの専用道路で貯蔵建屋の「受け入れ区域」に運び込む。その後、クレーンで架台に載せかえ、「貯蔵区域」で保管する。
 保管は空気の対流で冷やす「乾式貯蔵」方式を採用する。容器は二重のふたで放射性物質が漏れ出さないよう密閉。国内の大半が取り入れる原発内のプールの水に浸す「湿式貯蔵」方式と比べ、水や電力を使わず、電源が喪失しても事故の危険性が低いとされる。
 安藤副部長は「重大な原子力災害が想定される施設ではない。発電所とは扱いが大きく違う」と強調する。温度や放射線を測定する機器を取り付け、24時間体制で監視するという。

 稼働せず

 貯蔵建屋は2013年に完成したが、いまだ稼働には至っていない。
 11年の東京電力福島第一原発事故を受けて導入された新規制基準で、地震など自然災害への対策が大幅に強化されたことに加え、搬出元の東電柏崎刈羽原発(新潟県)でテロ対策の重大な不備が発覚した。原子力規制委員会が21年、核燃料の移動を禁じる是正措置を命じ、さらに延びている。
 稼働後、どれほどの間、保管されるのか。むつ市と青森県、東電、日本原子力発電が結んだ「立地協定」では、貯蔵期間は「50年」と定められている。搬出の量や期間など具体的な内容は、事業開始から40年目までに市と協議する約束だ。
 地元では「永久貯蔵」に対する懸念は根強い。市民団体「核の中間貯蔵施設はいらない!下北の会」事務局長の栗橋伸夫さん(73)は、「『中間』とは名ばかりにならないか」と警戒する。
 政府が推進する「核燃料サイクル」では使用済み燃料に化学的な処理を行い、ウランとプルトニウムを取り出す。中間貯蔵施設は、その前に一時的に保管する「仮置き場」でしかなく、立地協定にも、この旨が明記されている。
 だが、燃料の搬出先として想定される日本原燃の再処理工場(青森県六ヶ所村)は、着工から30年を過ぎたが完成せず、同サイクルが軌道に乗るかは見通せない。「仮に使用済み核燃料を搬入するにしても、『出口』が見えてからでも遅くはない」。栗橋さんは強調する。

 上関も計画

 中国電力(広島市)は8月、中間貯蔵施設の建設に向けた調査を予定地の上関町に申し入れ、西哲夫町長が約2週間で調査受け入れを表明した。中国電は取材に、施設では乾式貯蔵を想定していることを明かす一方、施設規模や燃料の保管期間は「現時点で決まったものはない」としている。
 元むつ市議の馬場重利さん(82)は、誘致に関わった者として施設の行方を心配している一人だ。誘致話が持ち上がった01年、市議会に調査特別委員会の設置を提案し、委員長に座った。議論する過程を重視し、年4回の議会定例会を待たずに審議できる場を求めた。海外視察も重ね、それらの結果として「立地は可能」と結論付けた。国内初の施設であり、最大の関心は市民の安全だったという。
 夏に冷たい東風「やませ」が吹き、コメ作りに適さない地域。「下北半島は『原始』から『原子』の時代になった。ここは原子力のメッカになるべき所で、これを大事にしないと生きられない」。議員を引退した今も、施設への期待は大きい。
 上関町での建設計画を報道で知った。「何をやるにしても、物事は『オール賛成』にはならない。原子力や施設について勉強し、理解を深めてから結論を出してほしい」。約1200キロ離れたまちを案じた。
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