[2021_06_20_03]むつ中間貯蔵施設 宙に浮く共用構想 電事連、半年動きなし 関電巡る状況変化? 親会社 燃料搬入も不透明(東奥日報2021年6月20日)
 
 むつ市に立地するりサイクル燃料貯蔵(RFS)の使用済み核燃料中間貯蔵施設を電力各社で共同利用したい−。大手電力でつくる電気事業連合会が昨年12月に共用構想を公表してから半年が過ぎた。この間、電事連が検討着手の大前提としていた「地元理解」に向けた具体的な動きはなく、構想は常に浮いたままだ。(本紙取材班)

 「共用化ありきではなく、スタートにすら立つ前であると認識している」
 4月26日、むつ市役所。宮下宗一郎市長と向かい合っていたRFSの親会社・東京電力ホールディングスの宗一誠常務執行役・青森事業本部長は、共用化に向けた検討はまだ始まっていないと強調した。
 共用構想は昨年12月に突如、表面化した。同17日、全国の原発でたまり続ける使用済み核燃料対策の一環として、電事連の池辺和弘会長が梶山弘志経済産業相に共用構想を含む取り組み方針を説明。翌18日には、電事連の清水成信副会長と経産省幹部が、三村申吾知事、宮下市長にそれぞれ面会し、「地元の理解を得る努力をしながら検討を進めたい」と伝えた。
 あれから半年。県によると、電事連から来県の打診などは一度も来ていない。市も同様で、宮下市長は「電事連傘下の東電すら共用案は存在していないと認めている状況下で、むつ市が何かコメントする立場にはない」と淡々と語った。
 電事連によると、現在は「宮下市長から昨年12月に示された懸念事項に対して検討を進めている」という。今後について担当者は「国の状況を踏まえながら対応していく」と述べるのみだ。今年2月には経産省資源エネルギー庁の保坂伸長官も「青森県やむつ市に対し、できる限り早く政策的な視点からの説明を行いたい」と述べていたが、いまだ双方の表立った動きはみられない。
 「事業者も国も対応を急ぐ必要がなくなったのだろう」。複数の関係者は半年もの間、動きがなかったことをこう解説する。
 要因の一つに、「検討に参画したい」と真っ先に表明した関西電力を巡る状況の変化があるとみられる。
 昨年12月当時、関電は原発が立地する福井県から、運転開始から40年超となる高浜原発1、2号機、美浜原発3号機の再稼働議論の前提として、使用済み核燃料を中間貯蔵する県外の候補地を示すよう求められていた。だが、本県側の反発もあり、関電は12月内の提示を断念。今年2月、共用構想を含めて計画地点を検討していると福井県に報告した上で、最終期限を「23年末」に繰り延べた。杉本達治知事もこれを受け入れ、再稼働と県外立地問題を切り離して検討すると表明。4月には再稼働に同意した。
 共用構想に積極的な電力会社は現時点で関電以外に見当たらず、関電も急場をしのいだことで、いったんは沈静化したようにみえる。ただ、問題が先送りされただけで、今後の展望は見通せない。
 県内のある自治体関係者は「国と事業者は、なぜむつの施設でなければならないか、納得のいく説明を尽くす必要がある。そもそも関電が過去、現在と県外候補地を探す努力をしているのか疑問だ」と話した。

 親会社 燃料搬入も不透明

 リサイクル燃料貯蔵(RFS・むつ市)の中間貯蔵施設は、親会社である東電と日本原子力発電の原発から発生する使用済み核燃料を一時保管するために建設された。福島第1原発事故を経て、両社の原発は再稼働の見通しが立っておらず、むつ市に燃料を搬出する緊急性は薄れている。
 東電の柏崎刈羽原発(新潟県)では、7号機の再稼働が間近とみられていた。だが今年に入ってから複数の不祥事が発覚。核物質防護設備の末席を巡り、4月には原子力規制委員会から核物質の移動禁止命令を受けた。対象にはプールで冷却中の使用済み核燃料も含まれ、特別な理由がない限り移動は認められない。
 RFSは当初、柏崎刈羽原発から初回の燃料を受け入れる方針で、金属製の容器「キャスク」1基を既に運び込んでいた。計画が当初通りであれば、禁止命令が解除されるまでキャスクに燃料を入れることができず、初回の搬入時期にも影響する恐れがあるが、RFSの担当者は「燃料の搬入計画は電力会社が決める。現時点で確定しているものはない」と説明、搬出が同原発以外となる可能性も示唆した。 (本紙取材班)
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