[2021_06_24_03]40年超運転の美浜原発再稼働「避難は困難」「理解促進を」思い交錯(毎日新聞2021年6月24日)
 
参照元
40年超運転の美浜原発再稼働「避難は困難」「理解促進を」思い交錯

 運転開始から40年を超える関西電力美浜原発3号機(福井県美浜町)が再稼働した23日、原発周辺は40年超運転に反対するシュプレヒコールに包まれた。高経年化した原発への懸念や地元経済への効果など、さまざまな思いが交錯する中、福井県内で原発回帰のさらなる一歩が進められた。【大島秀利、岩間理紀、横見知佳、大原翔】
 この日、美浜原発から南へ約10キロ離れた美浜町の関電原子力事業本部のプレスセンターにはテレビモニターが設置され、3号機の中央制御室の様子が映し出された。午前10時、運転員がタッチパネル式の制御盤を操作すると、構内に「3号原子炉起動しました」と放送が流れ、同原発としては10年ぶりの再稼働を告げた。近藤佳典副事業本部長は「今後に向け身が引き締まる思い。40年超のプラントの有効活用で安全運転の実績を続けたい」と述べた。
 全国各地から約350人(主催者発表)が集まったデモは正午に同町保健福祉センターを出発し、午後0時45分ごろ、同事業本部に到着。「老朽原発うごかすな!実行委員会」呼びかけ人の木原壮林さん(77)が、美浜原発3号機の稼働を直ちに中止するよう求める申し入れ書を提出した。同書では事故の際には美浜だけでなく、関西など周辺府県の住民も避難対象となることを指摘し、「避難は困難」と主張。木原さんは「老朽原発を動かせば必ず事故が起きるだろう。絶対に稼働を止めたい」と話した。関電の担当者は「社内で共有する」と受け取った。その後、参加者は美浜原発近くで抗議集会を開き、同原発まで行進した。
 デモに大津市から参加した下村勉さん(80)は美浜原発で事故が起きた場合の琵琶湖への影響を懸念する。琵琶湖の水は京都や大阪など近畿地方の住人の飲料水や工業用水として使われる。「老朽原発の危険性はとても高く、事故が起きて琵琶湖が汚染されれば福井や近隣地域だけでなく広範囲の人に影響が及ぶ」と語った。
 福島県郡山市の黒田節子さん(70)は、福島第1原発事故で同県田村市から京都へ移住した知人が、甲状腺がんで1カ月ほど前に亡くなったと明かした。「福島の人が原発事故で多くの被害を受けたのに、再稼働はあり得ない。国は全国に散らばり生活に困っている避難者の支援を続けるべきだ」と訴えた。
 京都市伏見区の矢島哲夫さん(71)はJR京都駅前などで定期的に原発への抗議を訴えてきた。統合失調症だった妻は生前、「もし事故があっても、私は避難所では落ち着けない」と嘆いていたという。矢島さんは「精神障害者は孤立する。そうした事態を招く事故が起きる恐れがある原発を動かしてはいけない」と声を震わせた。

 ◇福井知事「安全最優先で」

 一方、杉本達治・福井県知事や戸嶋秀樹美浜町長は、報道各社の取材に対し、「(国と関電は)安全最優先で必要な工程を経てほしい」などと語った。また、福井県高浜町の野瀬豊町長は「高浜原発1、2号機の再稼働も控えている中、国には引き続き原発の重要性や必要性について国民理解の促進に努めてほしい」とコメント。おおい町の中塚寛町長も原発利用に関する国民理解促進に向けて国の努力を求めた。
 原発が再稼働すれば使用済み核燃料が発生する。県は40年超原発の「地元同意」の表明にあたって関電の「県外中間貯蔵施設」の候補地選定を巡る問題を事実上先送りする形で再稼働を容認。今後の対応を問われた杉本知事は「まずは関電が国と一緒になって確定に向けて最大限の努力を。しっかりと進めてもらいたい」とこれまでの回答を繰り返した。
KEY_WORD:40年超原発再稼働_:TAKAHAMA_:FUKU1_:MIHAMA_: