[2021_08_05_03]関西電力美浜3号機再稼働に抗議 (上)(3回の連載) 誰も責任を取れない「原発破局事故」 老朽原発の運転は過酷事故リスクをさらに高める 東電福島第一原発の事故原因は「未確定」 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2021年8月5日)
 
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関西電力美浜3号機再稼働に抗議 (上)(3回の連載) 誰も責任を取れない「原発破局事故」 老朽原発の運転は過酷事故リスクをさらに高める 東電福島第一原発の事故原因は「未確定」 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

1.はじめに

 関西電力は6月23日午前10時、美浜原発3号機の制御棒を引き抜き、原子炉を臨界状態にする「起動操作」を開始した。
 10年4ヶ月前に当時40年目を迎えていた老朽原発、福島第一原発で原発震災を経験、未曾有の原子力災害を引き起こし、残酷な現実を突きつけられた日本で、再び多くの原発を基幹電源として起動させる政策決定の一環として、運転開始から40年を超えた美浜原発3号機を再稼働する暴挙に出たことは、世界に対しても重大な背信行為であり、強く抗議する。
 その後、起動後に行われる「総合負荷試験」を終了し、経産大臣により「使用前検査合格証」が交付され7月27日に営業運転に入った。震災後、日本で40年を超えて運転する最初の原発になったのである。

2.東京電力福島第一原発の事故原因は「未確定」

 政府は福島第一原発事故の原因調査を最優先で取り組むべきだった。政府事故調査委員会と国会事故調査委員会の報告書は、事故の原因についてすら見解が分かれている。
 国会事故調査報告書では、津波の前に地震による影響も生じていた可能性が指摘されている。このことは解明されることなく、その後に制定された新規制基準(原子炉等規制法の改正)では、その点を全く無視して行われ、他の原発に要求されている緊急対策でも、ほぼ津波対策に限定している。
 結果として原因の一部しか対策されない結果となった。
 地震想定を引き上げても、美浜原発3号機の場合は、750ガルから993ガルへ1.3倍ほど引き上げたに過ぎない。
 この程度では既存の電源設備は大した強化もされていないから、福島第一原発事故の教訓を生かしたなどとは言えない。
 「特定重大事故等対処施設」など、対策を強化した設備を恒設したとするが、それはまだ完成しておらず、10月には期限切れで再度停止することが決まっている。
 ならば、「特重」ができるまで動かすべきではない。
 外部電源が1回線でも生き残ったことが、女川原発や福島第二原発を過酷事故から辛うじて救った。
 福島第一原発でも、耐震性強化や耐津波対策を講じていたら、少なくても全電源喪失は免れた可能性が高い。
 また、事故前に実施されていた過酷事故対策が、どのように作用し、結果として原子炉を守る方向に働いたのか、むしろ破壊する方向に働いたのかさえも確定していない。
 福島第一原発事故では、数ある分析の中で、現場での応急対策を含め過酷事故対策として採られた方法に問題があった場面は、いくつか指摘されている。
 当然これらの分析が確定しなければ新たな事故対策を策定することも困難である。実際に電力会社が改定した運転規定(保安規定)において実施される対策にも、大きな誤りのある可能性が指摘できる。(例えば格納容器への注水などは水蒸気爆発を誘発する恐れがある、など)
 これらも十分に議論をされずに原子炉を起動したのは、新たな事故を準備する行為であると言わざるを得ない。
 また、一般産業並みの耐震強度でしかない外部電源設備は、耐震クラスを最強度のSクラスに上げて非常用設備の一部として位置づけ強化し、安定性の向上を図るべきところ、巨額の費用負担を嫌がり、これまでどおり脆弱なままで運用されている。
 美浜原発3号機などの老朽原発は、この電源設備に加え、各種ケーブル類も建設当時の古い基準のまま使われているところが随所にある。
 本来は、最新の耐火性能を持ったものに敷設し直さなければ、新規制基準にさえ適合しないはずが、交換は不可能として難燃シートでくるむなどの便法を編み出し、古いまま使っている。
 これがまかり通る新規制基準では、過酷事故を防ぐ効果はない。
                       (中)に続く
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