[2021_08_25_07]福島原発事故後によせる「廃炉の波」 完了まで数十年、課題は(毎日新聞2021年8月25日)
 
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福島原発事故後によせる「廃炉の波」 完了まで数十年、課題は

 東京電力福島第1原発事故後に訪れた「廃炉の波」。現在、全国各地で廃炉が進む商用炉は計24基で、これまでに国内で建設されてきた炉の約4割に上る。燃料デブリ(溶け落ちた核燃料)や汚染水との格闘を強いられる福島第1原発は別としても、一般的な廃炉も完了までに数十年もかかる大事業だ。進め方や課題を探った。

作業工程は4段階

 原子炉を停止させて原発を解体する「廃炉」。作業を進めるには、電力会社が廃止措置(廃炉)計画を原子力規制委員会に提出して認可を受ける必要がある。
 廃炉作業の工程は、大きく4段階に分かれる。第1段階では汚染状況の調査、除染や使用済み核燃料の取り出しなどを実施する。言ってみれば解体前の準備期間だ。続く第2段階では、原子炉の周辺設備の撤去などを進める。第3段階に入って中心部である原子炉本体などの解体を実施する。最後の第4段階は、原子炉を覆う建屋などを取り払う作業だ。全てが完了するには30〜50年がかかるとされる。
 運転が終了すれば原発はそれで「終わり」ではない。廃炉完了までは長い長い道のりで、その間も安全管理は必要になる。

頭の痛い廃炉ゴミの問題

 2011年3月の福島第1原発事故以降、引き上げられた安全対策への対応や対策に必要となる多額の安全対策費を背景に、採算性の低い比較的小型な炉を中心に全国で廃炉が進んだ。一方で、電力各社が頭を痛めているのが施設を解体すれば発生する廃棄物(廃炉ゴミ)の問題だ。
 廃炉で施設を解体するなどして発生するゴミの一部は、当然だが放射線で汚染されている。例えば、今年7月に廃止措置計画の変更を規制委に申請した関西電力美浜原発1、2号機(福井県美浜町)では、放射能レベルが高い順に「L1」「L2」「L3」に区分される低レベル放射性廃棄物と呼ばれるゴミが2基で計約6420トン発生する。放射能レベルが比較的高い制御棒などの「L1」はそのうち約150トンになるとしている。
 低レベル放射性廃棄物を巡っては6月に規制委が「L1」について「10万年後まで地表から地下70メートルの深さが確保される場所に埋設する」などとした処分基準案を了承した。正式決定されれば、廃炉ゴミの基準が一通り整備されることになる。
 大手電力でつくる電気事業連合会は「共通の課題として処分方法の検討を協力して行う」としているが、基準ができても実際にゴミを処分する「ゴミ捨て場」を見つけるのがスムーズに進むとは限らない。ちなみに関電が実施中の4基の廃炉では、「L1」だけでなく「L2」「L3」についてもどこで処分するかは決まっていない。
 ゴミの処分先が決まらなければ廃炉作業も滞る。積み残しにはできない課題だ。【岩間理紀】
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