[2018_01_19_05]プルトニウム政策の見直し? 原子力委員会が改定議論を開始か どのようにしても整合性を取れない核燃料サイクルは中止すべき 山崎久隆(たんぽぽ舎)(たんぽぽ舎2018年1月19日)
 
参照元
プルトニウム政策の見直し? 原子力委員会が改定議論を開始か どのようにしても整合性を取れない核燃料サイクルは中止すべき 山崎久隆(たんぽぽ舎)

 1月16日、NHK、毎日新聞、京都新聞などが一斉に「原子力委、プルトニウム削減促す 新たな指針策定へ」「プルトニウム利用方針 15年ぶり改定議論へ」
等と報道している。
 「利用目的のないプルトニウムは持たない」は、日本の原子力政策の根幹であるから、余剰プルトニウム対策と透明性の確保のために、プルトニウム利用の基
本方針を15年ぶりに改定する議論を始めるという。

◎遅すぎる方針転換
 国内外におよそ47トンのプルトニウムを保有していて使うあてがない現状は、別に今に始まったことではない。少なくても3.11原発震災後に、旧民主党政
権や現在の安倍政権ですら原発からの脱却あるいは原発依存の低減としていた段階で、プルトニウム利用を含む核燃料サイクル全体を見直す議論が始まっていな
ければおかしいのである。
 原子力委員会が2003年に策定したプルトニウム利用の基本方針でも「利用目的のないプルトニウムは持たない」としていたが、具体的な利用方針や進捗状況に
ついて一切責任を持っていなかった。いわば言いっぱなしのやりっぱなし。原子力推進体制の無責任振りを体現し続けてきたわけである。

◎原因は日米原子力協力協定か
 日本の原子力政策は日米原子力協力協定が根幹にある。今年7月の期限切れ後に自動延長することがほぼ固まっている。
 その中で核武装問題や余剰プルトニウム問題は条約改定問題に突き刺さる棘のようなものである。いくらトランプ政権が日韓の核武装に容認的とは言っても、
公式に核武装にゴーサインを出したわけでもないので、プルトニウム利用政策の整合性問題は課題となり得る。
 少なくても原子力推進機関として責任ある態度を示さなければ、あってもなくても意味がないと、原子力委員会の存在意義が問われかねない。
 米国内からも日本が大量のプルトニウムを抱えていることについて懸念が伝えられていた。

◎プルサーマルの実態
 プルトニウムを何処で消費するか、高速増殖炉計画が一昨年の「もんじゅ」廃炉決定で消滅した以上、軽水炉でのプルサーマルしか残っていない。
 再稼働している原発の内、差し止め訴訟で運転を止めた伊方原発3号機を加えてもプルサーマルの認可を経ているのは3基しかない。100万kW前後の原発では
最大で炉心の3分の1をプルトニウム燃料体(MOX燃料体)で運転する。その際に0.3〜0.4トン(核分裂性プルトニウム換算)のプルトニウムを消費する。
年間使用はこの3倍程度でしかない。

◎原子力委員会の見直し案とは
 原子力委員会の想定はプルサーマルでの燃焼見通しに応じて再処理で取り出す量を調整することを含めて検討するのだという。
 プルトニウムを取り出す六ヶ所再処理工場は「2021年度上期」に完成する計画が示されていて、最大で年間8トンの新たなプルトニウムを生み出す。操業して
もプルサーマルで燃やす量に制限するというのだろうか。
 しかし、海外において再処理されたプルトニウムはまだ37トンも存在する。そのMOX燃料の輸入は、加圧水型軽水炉の燃料一体あたり10億円もかかる。
 どのようにしても整合性を取れない核燃料サイクルは中止すべきなのだ。

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