[2020_05_29_03]核燃再処理工場 もはや合理性がない(東京新聞2020年5月29日)
 
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核燃再処理工場 もはや合理性がない

 原子力規制委員会が、国の核燃料サイクルの重要拠点である再処理工場に、規制適合との判断を示した。だが、そのことに本質的な意味はない。核燃料計画そのものが、すでに破綻しているからだ。
 日本原燃が青森県六ケ所村で建設中の核燃料再処理工場は、原発で使用済みになった、いわば“燃えかす”の中から、原発の燃料として再利用可能なウランとプルトニウムを取り出す施設。核のリサイクル工場だ。
 一九九三年の着工、九七年には完成するはずだった。化石燃料資源に乏しい日本が、高度経済成長時代に見た夢だ。
 ところが、廃液漏れが続発するなどトラブルが相次いで、完成延期は二十四回にも及び、未完成。建設費は二兆九千億円と、当初見込みの約四倍に膨らんだ。
 操業開始後四十年の運営費や廃止費用を含めると、総事業費は約十四兆円にも上るという。もはや「悪夢」と言うべきだろう。
 そんな施設が、3・11後に改められた原子力施設の安全対策の規制基準に「適合」するとの判断を、原子力規制委員会から取り付けた。ただし規制委は、津波や地震などへの備えが、国の基準に沿うかどうかをみるが、安全のお墨付きではない。核燃料サイクルの合理性を判断する場でもない。
 ゆえに、規制委の判断が妥当かどうかという以前の問題で、核燃料サイクル計画そのものが、今問われるべきなのだ。すでに破綻した計画だからである。
 サイクルのもう一つの要である高速増殖原型炉の「もんじゅ」。再処理燃料を使って繰り返し電気を起こす特殊な原子炉だ。こちらも再処理工場に負けず劣らずトラブル続き。四年も前に廃炉が決まっている。国は新型高速炉の開発をめざすというが、技術的にも財政的にも見込みは薄い。
 たとえ再処理工場が完成しても、燃料の使い道がなければリサイクルは成り立たない。通常の原発で使える量はごくわずか。再処理をすればするほど、原爆の材料にもなるプルトニウムの在庫が増えていき国際社会の批判を強めるだけだ。無用の長物に、これ以上巨費を投じる理由はない。
 リサイクル不能であれば、使用済み核燃料は、ただのごみ。危険なごみだ。
 国は核燃料サイクルの断念を表明し、増え続ける核のごみの最終処分、そしてごみを出さない工夫、つまり脱原発を速やかに進めていくべきだ。
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