[2021_03_06_04]ドキュメンタリー映画『地球で最も安全な場所を探して』 「核のごみ」をどうやって処分するのか 高レベル放射性廃棄物が危険でなくなるまでに10万年かかる 安全に保管できる場所はあるのか 安田節子(食政策センター・ビジョン21)(たんぽぽ舎2021年3月6日)
 
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ドキュメンタリー映画『地球で最も安全な場所を探して』 「核のごみ」をどうやって処分するのか 高レベル放射性廃棄物が危険でなくなるまでに10万年かかる 安全に保管できる場所はあるのか 安田節子(食政策センター・ビジョン21)

◎ ドキュメンタリー映画『地球で最も安全な場所を探して』は原発から出る「核のごみ」=使用済み核燃料の安全な処分場所を探す核物理学者で廃棄物貯蔵問題専門家のチャールズ・マッコンビー(英国出身スイス在住)とともにエドガー・ハーゲン監督が世界の処分候補地を巡った記録だ。

◎ アメリカ・ユッカマウンテン(放射性廃棄物処分場−建設中止になったが再開計画も)、英国・セラフィールド(再処理工場−廃炉作業中)、中国・ゴビ砂漠(最終処分場候補地)、青森県六ケ所村(再処理工場−竣工大幅延期)、スウェーデン・エストハンマル(最終処分場候補地)、ドイツ・ゴアレーベン(最終処分場候補地−計画白紙)、スイス・ベンケン(最終処分場候補地)、オーストラリア・オフィサー盆地(最終処分場候補地−計画白紙)など。

◎ 高レベル放射性廃棄物が危険でなくなるまでに10万年かかるという。
 果たして人類が存在しているかさえ不明な遠い先まで安全に保管できる場所はあるのか。
 これまで候補となった土地で突き付けられる現実や現地住民の反対。
 マッコンビーはきっと見つかるとの思いを持っているようだ。
 しかし、地殻変動、地下水汚染、火山の噴火などは予知不可能であり核のゴミはどこか安全な所に持って行って埋設処理するという解決法はないのではないかと思わされる。

◎ さて日本の原子力村は狭い日本列島に54基もの原発を建てながら、核ゴミには目をつむり、見て見ぬふりでひたすら先送りしてきた。原発はまさにトイレの無いマンションであり続けた。
 この60年間で高レベル放射性廃棄物は世界で35万トン以上が溜まり続けている。
 日本では2020年3月時点で全国の原発や六ケ所再処理工場で貯蔵されている使用済み核燃料は1万9千トンに上り、全保管容量の8割近くに達しているという。
 もうこれ以上核のゴミを出さないためにも原発は一刻も早く廃炉にしなければならない。
 これまでに溜まった使用済み核燃料は再処理しないで各原発敷地内の立ち入り禁止区域に目に見える形で保管し、永久監視するしかない。

◎ 現在、使用済核燃料は六ケ所村の再処理工場に送られ再処理することになっているが、再処理工場の竣工はめどが立っていない。
 政府は、使用済核燃料を再処理し、取り出したプルトニウムとウランを用いて作られた「MOX燃料」を「高速炉」と呼ばれる原子炉で燃やして発電に利用する「核燃サイクル」を謳ってきた。 
 そのサイクルの中核である「もんじゅ」はナトリウム漏れなど重大事故続きで廃炉が決まった。核燃サイクルは破綻したのだ。
 いまこそ再処理を止める決定をすべきだ。なによりプルトニウムを取り出すことは国民の災禍につながる。

◎ 2月13日23時8分、福島県沖を震源とする最大震度6強、マグニチュード7.3の大きな地震が発生した。
 政府の地震調査委員会は、2011年3月に発生した東日本大震災の余震との見方を示した。
 10年も続く余震?と思ってしまうが地球の歴史からみればほんの一瞬だ。
 今後も続くであろう余震、そして南海トラフ巨大地震の発生も、あるかないかではなく、いつ来るか、なのだ。このような認識に立つなら原発稼働はあり得ない。
 しかし、菅義偉首相が打ち出した「2050年までに温暖化ガス排出量ゼロ目標」を達成するための「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」には、堂々と原発の再稼働と新炉の開発が盛り込まれている。
 原子力について、「確立した脱炭素技術である。可能な限り依存度を低減しつつも、安全性向上を図り、引き続き最大限活用していく。
 安全最優先での再稼働を進めるとともに、安全性に優れた次世代炉の開発を行っていくことが必要である」と明記した。
 2030年には電力の20〜22%を原発だけでまかなうのが目標。

◎ 3・11東電福島原発事故を経験してもなお原発再稼働を許すなら、地獄の釜へ一蓮托生だ。
 次期総選挙では必ず投票に行って、脱原発、原発廃炉を公約に掲げる政党や候補者に投票しよう!

 2020年11月北海道の寿都町と神恵内村が高レベル放射性廃棄物の最終処分場の候補地選定に向けた文献調査に手を上げた。町長は応募の理由について、新型コロナウイルス感染拡大により産業が打撃を受け町税収入が年2億円ほどしかない町財政の将来への不安などを挙げ、調査に入った自治体には国から2年間で最大20億円出る交付金の活用を挙げた。

◎ 税収の厳しい自治体に札びらで頬をはたいて同意させる手口は原発誘致の手口と同じだ。
 その交付金は国民の税金だ。
 そのような使われ方には承服できない。
 電力会社の自己責任であり原発敷地内で解決すべきだ。経産省の敷地はどうか。
 お金で弱い立場の所に押し付けるやり口は汚い。

            『いのちの講座』127号巻頭言より転載

 『地球で最も安全な場所を探して』2月20日より
シアター・イメージフォーラム(渋谷)にて公開、ほか全国順次
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