[2022_01_27_06]次世代高速炉計画で日米が覚書締結…もんじゅ関連企業に参加求める方針(読売新聞2022年1月27日)
 
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次世代高速炉計画で日米が覚書締結…もんじゅ関連企業に参加求める方針

 日米による次世代の高速炉の開発計画で、日本原子力研究開発機構と三菱重工業は26日、米原子力新興企業テラパワー社と技術協力の覚書を締結した。原子力機構は、将来の国内建設に必要な技術の維持・発展につなげるため、これまで高速炉開発に関与した国内各社の参加を幅広く求めていく方針も明らかにした。
 テラパワー社は、米エネルギー省の支援で、2024年に次世代高速炉(出力34・5万キロ・ワット)の建設を米ワイオミング州ケマーで始め、28年の運転開始を目指す。
 覚書には、高速炉の設計を手がける三菱FBRシステムズも加わった。原子力機構などによると、日本側は、研究用の高速炉「もんじゅ」(福井県、廃炉作業中)や「常陽」(茨城県、安全審査中)の開発で蓄積した技術を提供。具体的には、三菱重工が持つ燃料を取り扱う装置や破損した燃料の位置を特定するシステムなど、高速炉の中核設備の開発に向け協議することで合意した。
 関係者によると、炉心の熱を取り出す冷却材の液体ナトリウムを循環させるポンプや熱交換器の技術、放射線を遮る 遮蔽 板など炉内構造物の技術も検討対象になる。
 いずれも高速炉の最も重要な技術に該当するため、原子力機構とテラパワー社は、秘密保持の取り決めも同時に締結した。今後、米国側が開示する設計に基づいて協議を進め、夏頃までに正式に契約する。
 原子力機構は、日立GEニュークリア・エナジー、東芝エネルギーシステムズ、富士電機など、もんじゅや常陽の開発に関わった国内企業の参加も促す。こうした企業が米高速炉に必要な製品を供給するなどしてビジネスにつなげ、原子力産業の振興を図る考えだ。
 米国側は、原子力機構が持つ世界有数のナトリウム実験施設「アテナ」(茨城県)の活用も希望している。アテナでは、高温のナトリウムの温度変化や流れ方などを試験できる。原子力機構は「米国から試験を受託し、外部収入を得るなどの協力方法も考えていきたい」と話している。
 高速炉は、核燃料を有効利用する日本の「核燃料サイクル政策」に不可欠な施設。だが、2016年にもんじゅの廃炉が決まり、開発は滞っていた。政府は、50年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現に向け、高速炉などの次世代原子炉の研究開発を進める方針だ。
 原子力機構高速炉・新型炉研究開発部門の 上出英樹副部門長は「脱炭素エネルギーとしての原子力の開発に貢献し、日本独自の技術を絶やさないようにしたい」と述べた。

 ◆ 高速炉 =高速の中性子の性質を利用して、従来の原発(軽水炉)よりもプルトニウムなどを効率的に燃やす原子炉。炉内の熱を取り出す冷却材には、主に液体ナトリウムを使う。強い放射線を長期間出す放射性廃棄物の量も減らせる。
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