[2020_10_08_10]MOX工場「合格」 規制委審査 国内初の「商業用」(東奥日報2020年10月8日)
 
 原子力規制委員会は7日、東京都内で開いた定例会合で、国内初となる商業用MOX(プルトニウム・ウラン混合酸化物)燃料加工工場(日本原燃、六ヶ所村)の安全対策が、新規制基準を満たすと認める「審査書案」を了承した。稼働へ向けた安全審査で審査事案は事実上の合格証。核燃料サイクル政策の主要な関連設備としては再処理工場(同村)、使用済み核燃料中間貯蔵施設(むつ市)などに続く「合格」となった。

 MOX工場は、隣接する再処理工場で使用済み核燃料から取り出すMOX粉末を原料に、原発で再び使える燃料に加工する施設。2010年の着工後、東京電力福島第1原発事故の教訓を踏まえた新規制基準の策定を受け、原燃は14年1月に安全審査を申請した。
 審査は主に、プルトニウムを含んだMOX粉末を取り扱う「グローブボックス」設備の火災を想定した重大事故対策を議論。遠隔装置による消火、速やかに放出経路を遮断して外部へ漏れる粉末の低減を図るなど、放射性物質を閉じ込めておく方策をまとめた。
 7日の定例会合で委員5人は全会一致で「合格」を了承。今後は正式合格へ向け、パブリックコメント(意見公募)や経済産業相への意見照会を実施する。更田豊志委員長は記者会見で「(サイクル政策の)一連の施設の特徴や潜在的リスクを考えると、規制当局として強い関心を持つのは設計よりむしろ運用段階。まだこれまでよりも高い山が残っている」と述べた。
 MOX事業は、政府が使用済み核燃料の全量再処理を前提に推し進めるサイクル政策の一環。MOX工場の建設費は着工当初の約1900億円から約3900億円に膨らみ、総事業費は約2兆3400億円に上る。原燃は完工目標を「22年度上期」と掲げるが、工事期間などを踏まえると延期は避けられない情勢だ。
 事実上の合格を受け、原燃の増田尚宏社長は「大きな前進であり、審査合格に向けて全力で取り組む」、六ヶ所村の戸田衛村長は「完工に向けて迅速に手続きなどを行っていただきたい」とそれぞれ文書でコメントを出した。
    (佐々木大輔)

 MOX燃料加工工場

 使用済み核燃料の再処理工場で取り出されたプルトニウム、ウランの粉末と、再転換工場から運ばれた二酸化ウラン粉末を原料に、MOX(プルトニウム・ウラン混合酸化物)燃料を作る工場。日本原燃の施設は2010年10月に着工した。粉末を混ぜて焼き固め、ペレットに加工した後、燃料棒に挿入して完成させる。原燃によると、1年間に製造するMOX燃料のエネルギーは、本県で消費する4〜5年分の電気に相当するという。国外ではフランスやベルギーに加工工場がある。
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