[2022_03_11_01]チェルノブイリ原発で外部電源喪失 IAEA保障措置システムからのデータ伝送が遮断 ザポリージャ原発もデータ遮断され外部電源も一部損傷 IAEA第16報からの情報提供 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2022年3月11日)
 
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チェルノブイリ原発で外部電源喪失 IAEA保障措置システムからのデータ伝送が遮断 ザポリージャ原発もデータ遮断され外部電源も一部損傷 IAEA第16報からの情報提供 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 ◎ チェルノブイリ原発では、IAEAの保障措置システムのデータ転送ができなくなり、使用済燃料を含む放射性物質の状態がつかめなくなりました。
 さらに、外部電源を喪失し、放射線測定システムや使用済燃料冷却系統などは非常用ディーゼル発電機による48時間の制限付き電源により賄われているようです。

◎ ウクライナは原因をロシア軍による攻撃であるとし、一方ロシアはウクライナの攻撃によるものであるとしています。(タス通信より)
 また、IAEAによると、チェルノブイリ原発とザポリージャ原発から、保障措置システムからのデータ転送が停止しているようです。
 これは、IAEAと各国が結ぶ保障措置協定に基づく、核物質の軍事転用や核兵器開発を防止するための仕組み。
 チェルノブイリ原発からのデータ転送が遮断されていることを第15報でIAEAは伝えていましたが、こんどはザポリージャ原発からも遮断されたということで、意図的に行われている可能性があります。

◎ また、ザポリージャ原発には外部電源系統が常用4つと予備1つあるようですが、そのうち常用2系統が遮断されたとのこと。
 福島第一原発事故でも、外部電源の喪失が津波到達後にあらゆる電源システムが機能しなくなった原因で、外部電源系統が一系統でも生きていたら、津波被害を受けていてもメルトダウンは回避できたのですが、そのことが証明されるのは女川原発、東海第二原発、福島第二原発が福島第一原発のようにならなかった事からもわかります。
 それほど重要な外部電源5系統の内2系統が破壊されたことは、安全性を大きく低下させていると言え、大問題です。
 IAEAの第16報の抄訳を紹介します。

「最新情報16−ウクライナ情勢に関するIAEA事務局長声明」抄訳

 ロシア軍が1986年の事故現場の支配権を握ってから2週間たって、チェルノブイリ原発は送電網から遮断され、外部電力供給が喪失したとウクライナ政府は本日、国際原子力機関(IAEA)に通告したとグロッシ事務局長は述べた。
 ウクライナ情勢の安全、セキュリティ及び保障措置の影響に対処する目的で3月2日に開催されたIAEA理事会において事務局長は、「全ての原子力施設に対する電力供給網からの外部電源の確保」が、原子力安全及び核セキュリティの7つの不可欠な柱の一つであるとして、この事態への深い憂慮を表明した。
 ただしIAEAは、チェルノブイリ原発の場合、送電網からの遮断は様々な放射性廃棄物管理施設が設置されている施設の本質的な安全機能に重大な影響を与えないと、ウクライナ規制当局との間で一致していると述べた。
 すなわち、敷地内の使用済燃料貯蔵施設については、プール内の冷却水の量は、電力を供給することなく使用済燃料からの効果的な熱除去を維持するのに十分である。また、ディーゼル発電機やバッテリーを備えた非常用電源も備えている。
 しかしながら、電力不足は、現場における運用上の放射線安全性のさらなる悪化につながり、約210名の技術専門家と警備員が過去2週間にわたり交代勤務できず、事実上24時間そこに居住していることに、さらなるストレスを生む可能性がある、とグロッシ事務局長は付け加えた。
 「チェルノブイリ原発では、特に放射線に対する安全のため、非常に困難で厳しい状況下で施設を管理するスタッフにとって、日ごとに状況が悪化しています」と彼は述べた。
 「内部放射線防護手順を尊重し、職員の安全な交代を円滑化し、さらに安全を確保するためにその他重要な措置をとるよう、発電所を実効支配している軍隊に緊急に要請を繰り返している」。
 また、別の動きとして、IAEAはここ数日、チェルノブイリ原発に核物質を監視するために設置された保障措置システムからの遠隔データ伝送を喪失し、現在ロシア軍が管理しているザポリージャ原発からのデータ送信も喪失したと述べた。
 大量の使用済核燃料や新燃料、そのほか各種放射性物質が存在する施設から、IAEAのウィーン本部に送られるデータの流れが突然遮断されたことを懸念していると、彼は述べた。
 保障措置データの伝送が中断した理由は、すぐにはわからなかった。
 IAEAは、他の3箇所の原発を含むウクライナの原子力施設から継続して当該データを受け取っている。
 「世界各地の原子力施設にあるIAEA保障措置装置からの遠隔送信は、ウクライナをはじめ世界中でのIAEAの保障措置実施の重要な構成要素である」と彼は述べた。「これらのシステムは、全ての原発を含む、ウクライナの数ヵ所の施設に設置されており、査察官が立ち会っていないときに、これらの施設での放射性物質と活動を監視することを可能にしている。」
 また、データを確実に現地で保管するための技術的な機能はあるが、監視システムのストレージ容量や稼働状況(訳注:後日確認できるようにデータを保存しているハードディスクやそれを制御するシステムなどを指すと思われる)は依然として不明だという。
 IAEAは、セーフガード技術措置によって、各国が平和的目的のためにのみ核物質及び技術を使用するという、国際的な法的義務(訳注:核拡散防止条約に伴う各国とIAEAの間で結ばれる保障措置協定に基づく)を遵守していることを検証している。
 また、ウクライナの原発の稼働状況については、ザポリージャ原発の2基を含む、同国の15基の原子炉のうち8基が稼働を続けているとしている。放射線の測定値は正常だった。
 ザポリージャ原発の敷地内には、4本の高圧(750kV)外部電源回線と1本の予備電源回線がある。運転員はIAEAに対し、2本が損傷しているため、現在2本の送電線と待機中の1本が発電所で使える状態であることを報告した。
 発電所の外部電源需要は、利用可能な1本の電力線で供給できるとも、この事業者は述べた。さらにディーゼル発電機も予備電力を供給する準備ができており、機能している。
 「しかし、これは、すべての原子力施設への電力網からの外部電源を確保できるという安全の柱が危険にさらされているもう一つの例」とグロッシ事務局長は述べた。
 また、6号機については、3月4日の事態を受けて、冷却系の損傷が発見されたことから、運転を停止して緊急修理を行っているとの報告があった。
※≪事故情報編集部≫より この文章は、3月10日受信です。

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