[2022_10_04_04]暴走する原子力行政 岸田政権の原発再稼働を止めさせよう 「原発依存度を低減…」というのは「可能な限り」がつくから、「可能でないから低減しない」詐欺的方針 (下)(了) 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2022年10月4日)
 
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暴走する原子力行政 岸田政権の原発再稼働を止めさせよう 「原発依存度を低減…」というのは「可能な限り」がつくから、「可能でないから低減しない」詐欺的方針 (下)(了) 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 4.岸田政権の原発回帰と再稼働

 岸田首相が8月26日に「グリーン・トランスフォーメーション(GX)実行会議」で明らかにした原発の再稼働促進。これ自体は、目新しい話ではない。
 岸田首相は「可能な限り原発依存度を低減する方針は変らない」「安全性の確保を大前提とする」「独立性の高い原子力規制委員会が厳格に規制を行っていくという方針は変らない」これに「再稼働を促進する」が続くのも、前政権と同じ。
 菅義偉前首相が2020年12月に「2050年までに温室効果ガス排出実質ゼロ」を表明したときも同じことをいっている。
 ただし、ここにきて具体的に「2023年夏以降に」「7原子炉」が加わったことが目新しい。
 5原発7基とは、関西電力高浜1、2号機(福井県)、東北電力女川2号機(宮城県)、中国電力島根2号機(島根県)、東京電力柏崎刈羽6、7号機(新潟県)、日本原子力発電東海第二(茨城県)である。
 原発の新増設の是非を曖昧にしたまま、一方では「依存度を可能な限り低減する」としているのに「重要なベースロード電源」とエネ基で位置づけ「2030年には原発20〜22%」とする。
 この数値を実現するには23基程度の原発が稼働していなければつじつまがあわない。現在再稼働している原発は10基、これが占める割合は6%ほど。
 つまり再稼働原発をフル稼働させるだけでなくさらに13基ほどの原発を動かしていなければならない。「依存度を低減」というのは「可能な限り」がつくから、可能でないから低減しない詐欺的方針だ。

5.例外だった延長運転も促進(最長80年運転も認める)

 福島第一原発事故の教訓として、国は原発の稼働期間を法律で定めることとした。それまでは運転期間は明記されていなかった。
 2012年6月、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(原子炉等規制法)が改正された。
 原発の運転期間は使用前検査に合格した日から40年、ただし1回に限り、20年を超えない期間延長することができるとされた。運転期間の延長に当たっては、新規制基準に適合することが求められた。
 これにより40年が迫った原発は、法定された対策を講じるか、廃炉にするか電力会社は迫られた。
 この「40年ルール」を導入した背景は、当初設置許可の審査を行った際に、40年の運転年数を仮定した設計上の評価が行われることが多いことが理由の一つとされた。
 例えば、原子炉圧力容器の「中性子照射脆化」の評価や、「プラントの起動・停止の繰り返しによる疲労評価」は40年間の運転期間を仮定している。
 これに対して岸田首相は、60年運転に加え、さらに20年延長し、最長80年運転も認める考えだ。
 また、運転年数の計算も、長期停止しているなどして実質運転していない期間を除こうという動きもある。
 これを行えば、2011年以降に順次運転停止してきた原発の稼働年数は増えないので、例えば東海第二が2038年11月に60年を超えるが、これも運転をしてから加算するとしたら、いくらでも先に延ばせることになる。
 しかし圧力容器の中性子照射脆化など運転により劣化する部材は緩和されるとしても、時間経過で劣化が続く電源ケーブルなどは劣化が進行するから、直ちに事故につながるリスクが高まる。コンクリート材の劣化も運転していなくても進行は止まらない。
 こうした考えが出ること自体が、原発の危険性を極大化させる暴挙であり、このようなことを言い出す者たちに原子力を語る資格は無い。

 (初出:2022年9月発行.月刊「たんぽぽニュース」 No321掲載文に見出しの追加)
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