[2023_05_16_03]東北電、来月25%値上げ 標準家庭2110円負担増 査定受け補正申請(河北新報2023年5月16日)
 
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東北電、来月25%値上げ 標準家庭2110円負担増 査定受け補正申請

 東北電力は16日、家庭や商店向け電気料金の規制料金について、1キロワット時当たり平均25・47%の値上げを国に補正申請した。経済産業省から値上げ幅を確定する査定方針が同日示され、昨年11月の申請内容を修正した。値上げは6月1日に実施される見込みで、規制料金の引き上げは2013年以来、10年ぶりとなる。
 値上げ後の主な契約メニューのモデル料金は表の通り。標準的な家庭の月額料金は2110円(26・27%)上がり、1万142円となる。実際は、輸入燃料価格の変動を反映させる燃料費調整額や、再生可能エネルギーの買い取り費用に充てられる「賦課金」が加味され、増減する場合がある。
 国の認可が必要な規制料金は2016年4月の電力の小売り全面自由化で撤廃が検討されたが、経過措置として存続。東北電は全体の契約件数のうち8割弱の536万件が該当し、今回の値上げの対象となる。
 東北電の昨年11月の申請は規制料金の年平均原価を3494億円、値上げ幅を32・94%と見積もっていたが、経産省の審査などを受けてともに圧縮。原価は下落傾向にある燃料費の再算定で203億円減としたほか、燃料調達単価や配当金の削減といった経営効率化などで71億円を削減するなどし、値上げ幅を7・47ポイント縮小させた。
 国の認可が必要ない家庭向けなどの自由料金についても6月1日から単価を見直し、自由料金全体で1キロワット時当たり平均3・53%値上げする方針も公表した。
 樋口康二郎社長は16日の記者会見で「さまざまな物価が上昇している中、顧客にさらなる負担をかけて大変心苦しい。ただ、電力の供給コストが電気料金の収入を上回る状況では電力の安定供給にも支障を来しかねない」と理解を求めた。

 樋口社長一問一答 「逆ざや」解消図る

 東北電力の樋口康二郎社長は16日、仙台市青葉区の同社本店で記者会見し、家庭向けなどの規制料金の引き上げ理由を説明した。2021、22年の福島県沖地震による設備被害などで財務基盤が弱まった中、輸入燃料価格が高騰したとして「(逆ざやで)負担額が継続的に増え、安定供給に支障を来しかねない」と強調した。主なやりとりは次の通り。

 −値上げによる業績への効果は。

 「燃料費調整制度で規制料金に転嫁できる燃料価格の上限を昨年6月から超えており、今年4、5月分で120億〜130億円の持ち出しを見込む。値上げで正常状態に戻る。業績見通しは燃料費や為替の動向を含めて精査し、算定できる段階で速やかに公表する」

 −昨年11月の申請当初は今年4月の値上げを見込んでいた。

 「電力小売りが全面自由化され、事業環境が変わった中で、昔の算定規則とマッチングしない部分の議論に時間がかかった。しっかりと審査していただいた」

 −13年の規制料金引き上げの際は当時の社長が役員報酬を自主返上した。

 「経営として逆ざやを解消しなければいけないのは当たり前のこと。役員報酬は既に業績連動で最大20%減額し、企業向け料金引き上げで最大10%を自主返上している。現時点でこれ以上の返上は考えていない」

 −今後は電気料金が高止まりするのか。

 「(24年2月計画の)女川原発2号機の再稼働を見込んだ分、値上げ幅を抑制している。燃料費調整制度は燃料費が下がれば電気料金は下がる仕組み。燃料費がずっと高止まりすることはなく、今は下落傾向だ」
電力料金、6月から25%値上げ 東北電力社長会見

 家庭も商いも音上げ寸前

 「大きなダメージ」「非常に困る」。東北電力の家庭や商店向け電気の規制料金を巡り、6月から平均25%の値上げが事実上固まった16日、宮城県内の家庭や事業者からため息が漏れた。ウクライナ情勢を引き金に歯止めがかからない物価高騰と合わせ、家計や収益を一段と圧迫。電力使用量が増える夏を前に、利用者は乾いた雑巾をさらに絞る状況に追い込まれている。
 2男1女を育てる大河原町のパート河野恵理さん(35)は「暑さを我慢してエアコンを稼働しないわけにもいかない。育ち盛りの子どもには食費もかかり、家計に余裕はなくなっている」と渋い表情。「どこを節約すれば生活防衛ができるのか、もっと真剣に考えていきたい」と語った。
 「テレワークで自宅にいる時間が増え、電気代も必然的に上がった」と訴えるのは、仙台市青葉区の会社員加藤瑞恵さん(48)。「電気代を会社が補助してくれればいいが、実現していない。仕事部屋と家族が過ごす部屋を一緒にするなど、できるだけの節電対策が必要」と話した。
 仙台市内で焼き肉店を営む藤田勉さん(50)は「冬場はガスコンロのおかげで室温も上げられたが、夏は冷房を使う。どれだけ負担が増えるか見通せない」と説明。「4、5月の客足はコロナ前までに回復したが、電気代の値上げや物価高で消費の落ち込みが怖い」と、明るい兆しが見え始めた直後のニュースに不安を募らせた。
 東日本大震災の被災地からも嘆く声が聞かれた。南三陸町の南三陸さんさん商店街で菓子店「雄新堂」を構える店主の阿部雄一さん(58)は「小麦粉や包装材もどんどん値上げ。冷蔵庫も冷凍庫も長時間稼働しており、電気料金が上がると、かなりきつい」と吐露。「人手不足で売る量も増やせない。レシピを変えたり、利益の上がる新商品を作ったり、少しずつ工夫するしかない」と前を向く。
 登米中央商工会(登米市)の熊谷敏明会長(64)は「原材料価格が高騰しており、電気料金の引き上げは仕方ない面もある」と冷静に受け止める。一方で、昨年秋の企業向け電力料金の値上げで、既に利益の確保が難しくなっている会員企業が相次いでおり「商品価格に転嫁する以外に経営を継続する方法はないのではないか」と懸念した。
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