[2023_05_25_06]女川原発2号機運転差止め判決に対する評価速報 原子炉の防護対策(1層〜4層)が万全としても 第5層(避難計画)は別個のもの…規制委が明言 規制委員会の判断すら無視して被告(東北電力)の代弁(コピペ)しただけの判決 上岡直見〔環境経済研究所(技術士事務所)代表〕(たんぽぽ2023年5月25日)
 
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女川原発2号機運転差止め判決に対する評価速報 原子炉の防護対策(1層〜4層)が万全としても 第5層(避難計画)は別個のもの…規制委が明言 規制委員会の判断すら無視して被告(東北電力)の代弁(コピペ)しただけの判決 上岡直見〔環境経済研究所(技術士事務所)代表〕

 すでに伝えられたように、女川原子力発電所2号機の運転差止めを求めた訴訟で、2023年5月25日に仙台地方裁判所は住民側の訴えを退ける判決を示した。
 詳しい分析は今後弁護団により行われると思うが、現時点での検討速報を示したい。
 なおこの記事は原告団・弁護団と調整したものではなく筆者(上岡)の個人的意見である。

 今回の訴訟は他地域とは異なる特徴がある。
 他地域では原発そのものの危険性を主な争点としてきたが、今回の裁判では避難計画に実効性がないために住民が被ばくする危険性がある点に特化した特徴がある。
 ところが判決はその争点を全く無視して、原告が争点にしていない「事故の発生可能性」を持ち出す一方で、避難計画の実効性の争点については無視という奇妙な判断を示している。

◎ そもそも避難計画は「防災」の枠組みであり、「原子炉そのものの防護対策(第1層〜第4層)がかりに万全に立てられていたとしても、第5層(避難計画)はそれとは別個のものである」という原則は、規制委員会自体が明言している。
 しかし判決は「原告側は放射性物質が異常に放出される事故が発生する具体的な危険があることを立証しておらず、事故が起きる危険性を前提とすることはできない」として規制委員会の判断すら無視して被告の代弁をしているだけで裁判になっていない。

◎ ところで避難計画の不備を理由に運転差止めを認めた水戸地裁判決(2021年3月)の主文は約800ページに及ぶのに対して、今回の仙台地裁判決の主文は45ページである。
 判決主文が長いほど良い判決だというわけではないが、裁判とは、たとえ裁判官が初めから原告敗訴の予断を持っていたとしても「双方の意見をよく聞いて論理的に判断しました」という成り立ちが求められるはずである。
 今回はそれもせず、事実上、被告(東北電力)側の書面をコピペしただけの内容であり、そもそも「再稼働から逆算した判決」と言わざるをえない。

◎ 東北電力は2024年2月に再稼働を目指しているため原告団・弁護団は直ちに控訴を検討するという。
 下記に原告団・弁護団声明を示す。
http://sustran-japan.eco.coocan.jp/datafile/onagawa_20230525.pdf
KEY_WORD:女川_避難計画の実効性争点_差し止め訴訟_:ONAGAWA_: