[2023_06_10_03]東通原発 規制委申請から9年 「目安」策定 足踏み続く 審査の進展 人員配分影響も(東奥日報2023年6月10日)
 
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東通原発 規制委申請から9年 「目安」策定 足踏み続く 審査の進展 人員配分影響も

 東北電力東通原発1号機(東通村)の再稼働に向けた原子力規制委員会の安全審査は、2014年6月の申請から10日で丸9年を迎えた。耐震設計の目安となる揺れの「基準地震動」、想定される津波高の「基準津波」の策定を前に、いまだ足踏みが続く。設備面のプラント審査に進む下地として欠かせない要素だが、規制委側の了承を得るにはさらに時間を要する見通し。
 「まずは基準地震動、基準津波の策定をできるだけ早期に実現したい」。東北電の沼畑秀樹・執行役員青森支店長は7日の記者会見で、地震・津波審査の進捗について「着実に審査は進んでいる」と強調した。
 東北電は申請から9年問の大半を、地震・津波審査に費やしてきた。規制委によると、基準地震動の策定に最も影響を与えそうな断層モデルの議論は22年時点で終結。一方で「全国共通に考慮すべき地震動」など複数の積み残しがあり、結論を得るに至っていない。
 基準津波は「十勝沖・根室沖から岩手県沖北部」連動型地震の波源モデルで、東通原発の敷地前面で最大水位上昇量が11・18メートルとなる想定を提示。一方で海底地滑りと組み合わせたモデルは10・14メートルで、連動型地震単体の想定を下回った。規制委側が東北電に再説明を要請した22年9月以降、審査会合は開かれていない。
 大半が未着手のプラント審査に進むには、これらの「基準」策定が前提となる。一方で東北電が24年2月の再稼働を目指す女川原発2号機(宮城県)は、既に安全審査に合格して地元同意を得ている。東通原発の審査の進み具合は「東北電が人的リソース(資源)をどちらに向けるかが影響する」(規制当局関係者)との見方がもっぱらだ。
 東北電は原発停止で火力発電への依存度が高く、女川原発の再稼働によって「年間800億円程度の燃料費の削減効果」(沼畑支店長)を見込む。燃料高騰などの影響で家庭向けに供給する電気の規制料金を1日に改定したが、その値上げ幅は女川が計画通りに再稼働する前提で算定した。
 東通原発が再認働すればさらなる削減効果を見込めるが、その時期はまだ見通せない。東北電は再稼働に向けた安全対策工事を「24年度」に完了する方針を掲げている。(佐々木大輔)
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