[2020_08_21_02]再処理工場の完成1年延期(NHK2020年8月21日)
 
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再処理工場の完成1年延期

 六ヶ所村にある原発から出る使用済み核燃料の再処理工場について、事業者の日本原燃は完成時期を1年延期し、再来年度上期とすることを決めました。
 延期は25回目で、当初の計画より完成は25年も遅れることになる見通しです。
 再処理工場は原子力発電所で使い終わった核燃料からプルトニウムを取り出して再利用する国の核燃料サイクル政策の要の施設です。
 電力会社などの出資でつくる事業者の日本原燃は来年度上期には工場を完成させる計画でしたが、21日、完成時期を1年延期して再来年度上期とすることを決め、増田尚宏社長が青森県の三村知事に報告しました。
 この中で延期の理由について、竜巻に備えた安全対策工事に相応の時間が必要で、工事後の検査の実施なども考慮したと説明しました。
 また本格操業については、工場が完成する再来年度上期以降、県や村の了解を得られ次第始めたいとしています。
 増田社長は「安全な操業に向けた取り組みを確実に実施するためとはいえ、以前に示した完成時期からおよそ1年遅れることになり、県民に大変なご心配やご迷惑をおかけすることをおわび申し上げる」と述べました。
 これに対し、三村知事は「何よりも安全確保が第1であり県民の安心安全につながるよう取り組んでもらうことが重要だと考えている。さらなる安全性の向上に向けて責任と使命感を持って不断の努力を続けてほしい」と述べました。
再処理工場はトラブルなどによってこれまでも完成時期の延期が繰り返されていて、延期は今回で25回目で、当初の計画より完成は25年も遅れることになる見通しです。

【三村知事 ”大きな節目”】
 日本原燃から報告を受けたあと、三村知事は、報道陣の取材に応じました。
この中で三村知事は、「大きな節目と感じている。工場の完成時期が、安全対策もきちっと行った上で事業者から改めて出されてきたことから、核燃料サイクル協議会の開催の要請を決めた」と述べ、県と政府が核燃料サイクル政策について意見を交わす核燃料サイクル協議会の開催を国に求める考えを示しました。
 その上で、「最終処分地やプルサーマル発電の状況など関係閣僚や官房長官を通じて、責任ある国としての立場から説明いただくことになる」と述べて、高レベル放射性廃棄物の最終処分場の選定状況などについて、改めて説明を求める考えを示しました。

【六ヶ所村にも報告】
 再処理工場の完成時期の1年延期について、事業者の日本原燃は工場のある六ヶ所村にも報告しました。
 日本原燃の津幡俊副社長など2人は、21日午後3時半に六ヶ所村役場を訪れ、戸田衛村長に延期を報告しました。
 津幡副社長は始めに「約束していた竣工時期を変更することになり、大変申し訳ございません」と陳謝した上で、延期したいきさつや、今後の計画について資料を用いて説明しました。
 これに対し、戸田村長は「日本原燃側にはこれ以上の延期はないよう強く要請しており、今回の報告は誠に遺憾だ。地域経済への影響を深刻に受け止め、1日も早い竣工を求めたい」と述べました。
 報告のあと、戸田村長は「村の地域作りへの影響が考えられ、延期は非常に残念に思う。日本原燃側には安全かつ迅速にしっかり対応するように要請した」と話していました。

【“安全性向上と確実な竣工は不可欠”】
 使用済み核燃料の再処理工場の事業主体で、運営を日本原燃に委託している「使用済燃料再処理機構」は、「原子燃料サイクルの確立に向け再処理工場の安全性向上と確実な竣工は不可欠だ。安全・安定操業に向けた取り組みを着実に進められるよう当機構としても努めていく」とコメントしています。

【延期の理由 ”設備を新たに移設する必要”】
 今回、再処理工場の完成時期を1年延期した理由について日本原燃は、竜巻対策のため「冷却塔」と呼ばれる設備を新たに移設する必要が出たためとしています。
 「冷却塔」は、高レベル放射性廃液を冷却するための水を冷やすための設備で、工場の建屋の屋上などに設置されています。
 日本原燃は、竜巻が起きた際に飛来物から「冷却塔」を守るため、鋼鉄製のネットで囲うとしましたが、こうした対策を取ると重さが増して建屋の耐震性にあたえる影響が大きくなるとしています。
 このため、「冷却塔」を地上に移設することにしましたが、移設のためには地盤改良工事などを行う必要があり、相応の時間がかかるとして延期を決めたとしています。

【安全対策工事とは】
 再処理工場の安全対策工事は、福島の原発事故のあとにできた災害や重大事故に対する新たな規制基準を踏まえて行われています。
 このうち、竜巻対策の工事では、工場内の空気を排出する高さおよそ150メートルの「排気筒」に設置された観測機器などを飛来物から守るために、鋼鉄製の板を周囲に設置する計画です。
 また、航空機が施設内に落下して火災が起きた場合、屋外に設置されている薬品の貯蔵タンクが熱で爆発するおそれがあることから、地下に15メートルの穴を掘ってコンクリート製の建物をつくり、タンクを移設することにしています。
さらに、周辺にある石油備蓄基地や森林で同時に火災が起きても、重要な設備に影響が出ないようにするため、工場の周りの地面をコンクリートで覆う、全長およそ7キロの防火帯を整備しています。
 このほか、高レベルの放射性廃液を保管したタンクを冷却する水が、災害などによる電源喪失で不足した場合には、工場の近くにある沼や川に車両でポンプを運んで水を確保できるようにするため、新たに道路を整備しています。

【たまり続ける使用済み核燃料】
 使用済み核燃料の再処理工場の完成が遅れるなか、稼働中の原子力発電所では、使い終わった核燃料が貯蔵用のプールにたまり続けていて、電力各社によりますと、原発によっては数年程度でプールの容量が限界に達する可能性があります。
 六ヶ所村の再処理工場では、22年前から原発で使い終わった核燃料を受け入れてきましたが、本格操業が始まらないなか、4年前には工場内で保管できる限界近くに達し、現在、受け入れを行っていません。
 こうしたなか、福島の原発事故のあとに再稼働した全国の5つの原発では、使い終わった核燃料が貯蔵用のプールにたまり続けていて、電力各社によりますと、原発によっては数年程度でプールの容量が限界に達する可能性があります。
このうち、佐賀県にある玄海原発では、3号機が5年程度、4号機が4年程度で、事実上の保管の上限となる「管理容量」に達する可能性があるとしています。
また、愛媛県にある伊方原発3号機と、福井県にある高浜原発では6年程度で、福井県の大飯原発では8年程度で、「管理容量」に達する可能性があるということです。
 このほか、鹿児島県にある川内原発では、1号機が12年程度、2号機が7年程度で、「管理容量」に達する可能性があるということです。
 政府は5年前、原発が再稼働すれば、使用済み核燃料が増えてプールが満杯になるおそれがあるとして、電力各社に対して、核燃料を貯蔵できる容量を増やすことなどを求めていて、各社は貯蔵用の施設を新たに整備するなど、対応にあたっています。
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