[2021_01_05_03]大飯原発の設置許可取り消す判決 大阪地裁(週刊金曜日2021年1月5日)
 
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大飯原発の設置許可取り消す判決 大阪地裁

 東日本大震災後、再稼働した関西電力大飯原発3号機・4号機(福井県おおい町)の安全性に問題があるとして、近畿6府県と福井県などの住民約130人が、国の原子力規制委員会(以下、規制委員会)が関電に与えた設置許可の取り消しを求めた訴訟で、大阪地裁(森鍵一裁判長)は12月4日、設置許可を違法として取り消す判決を出した。原発再稼働にお墨付きを与えてきた規制委員会の審査の欠陥と不合理さを指摘したもので、原発再稼働の前提が大きく揺らぐ、画期的な判決だ。
 判決は、関西電力が策定した基準地震動の妥当性に関連して、規制委員会が「算出された地震規模に何らかの上乗せをする必要があるかどうか」を検討していなかったことを指摘。そのうえで「このような調査、審議および判断の過程には看過しがたい過誤、欠落がある」と認定した。規制委員会は、原則としてすべての原発について同じような審査をしているため、再稼働中や再稼働をめざしている他の原発についても影響を与えることになる。
 裁判で最大の争点となってきたのは、3号機と4号機の耐震性を判断するための基準地震動を策定する際に行なわれた地震規模の算定が、新規制基準に適合しているとした規制委員会の判断に不合理な点があるかどうかだった。基準地震動の妥当性を厳格に確認するために規制委員会が定めた「審査ガイド」には、このような一文が入っている。
 「(地震規模を設定する)経験式は平均値としての地震規模を与えるものであることから、経験式が有するばらつきも考慮されている必要がある」
 今年1月30日、裁判をどのように進行させるかを話し合う裁判所での協議で、裁判長は次のように指摘した。審査ガイドにある「ばらつきも考慮されている必要がある」という部分は、福島原発事故後の新規制基準になって初めて設定されている。被告はその意味をよく考え、「ばらつき」として少なくとも標準偏差を考慮しても設置許可基準規則を満たすことを具体的に示せ――というものだ。
 しかし、被告の国は、この指示に何らまともな回答を示すことができなかった。国の主張に対して判決文は、逐一具体的に批判している。国が控訴する場合、この判決の判断に具体的に反論しなければならないが、それができるくらいならすでに行なっていたであろう。

【全原発に耐震評価の見直しが必要に】
 規制委員会の調査・審議過程における「看過し難い過誤、欠落」は、すべての原発や審査ガイドを参考に用いた原子力関係施設に当てはまる。
 判決は、これらの施設についても基準地震動の見直しが必要であることを事実上示したという普遍的意義を持つのだ。
 中でも差し迫って問題になるのが、全国で初めて40年越えとなる老朽化した原発、美浜3号機(福井県美浜町)と高浜1号機・2号機(同県高浜町)である。
 たとえば美浜3号機は来年1月に運転再開が予定されているが、それには美浜町と福井県の同意が必要となる。その場合、耐震安全性が問題になるが、自治体は自らが安全判断することは避け、国の判断に委ねてきた。その国、つまり規制委員会の審査と判断に過誤や欠落があると司法が判断した状態で、自治体が国を頼ることができるだろうか。
 判決後の記者会見で、弁護団長の冠木克彦弁護士は、「基準地震動への批判が(判決で)出たというのは大きな意味をもっている。国は控訴するだろうが、この判決が出たということで、すべての議論が今日から始まる。(原発再稼働などで)ものすごく大きな影響を与えるだろう」と述べた。
 今回の判決を踏まえて全国各地の原発や六ヶ所再処理施設(青森県)等の耐震性について、改めて「ばらつき」を考慮した見直しが求められる。このような方向を連携・協力して進めていきたい。
(小山英之・大飯原発訴訟原告団共同代表、2020年12月11日号)
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