[2021_07_05_02]再稼働はどうなる?泊原発の審査の行方(NHK2021年7月5日)
 
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再稼働はどうなる?泊原発の審査の行方

 北海道電力・泊原子力発電所の敷地内の断層について、原子力規制委員会は2日の審査会合で、「活断層ではない」と結論づけました。再稼働に向けた審査が1つの節目を迎えたことになります。申請から、はや8年。今回の判断の意味はどこにあるんでしょうか。また、今後の審査の見通しはどうなりそうなんでしょうか。

【再稼働の申請、早かったものの…】
 北海道電力が目指している泊原子力発電所の再稼働。その審査を原子力規制委員会に申請したのは、東京電力・福島第1原発の事故を受けた新規制基準が施行されたあとの2013年7月のことです。ほかの3つの電力会社とともに、全国でもっとも早い申請でした。
 同時に申請したのは、▼北電の泊原発1号機から3号機のほか、▼福井県にある関西電力大飯原発の3号機と4号機、高浜原発の3号機と4号機、▼愛媛県にある四国電力伊方原発の3号機、▼鹿児島県にある九州電力川内原発の1号機と2号機です。
 このうち、泊原発の3基を除く4原発の7基は、いずれも審査を終えてすでに再稼働しています。

【たび重なる規制委の指摘で8年】
 申請から8年もたっているのに、なぜ、泊原発の審査が終わっていないのでしょうか。その大きな要因は、数ある審査項目の中でも重要な敷地内の断層の評価について、北電が説得力のある材料をなかなか示すことができず、評価が定まらなかったことにあります。
 断層が地震を引き起こす可能性がある、いわゆる「活断層」かどうかは、12万年から13万年前よりも新しい時期に活動した痕跡があるかどうかで判断されます。北電は当初、過去のボーリング調査で得られた資料から、原発の敷地を通る断層の上には「20万年前の火山灰の層が堆積している」ことが判断できるため、「断層は活断層ではない」と主張していました。
 ところが、規制委員会から根拠とするデータが不足していると指摘され、周辺の敷地を改めて調査したところ、火山灰の層をはっきりと見つけることができませんでした。審査は振り出しに戻りました。
 北電は、「火山灰の層」の代わりに「地形の成り立ち」から断層が活断層でないことを説明する方針に転換。そして、新たな調査によって、敷地を通る「断層の真上にある地層」が最も新しいと見積もった場合でも、21万年前よりも古いものだと判断できたため、その下にある断層も21万年以前のものだと説明しました。これに対し、規制委員会は「断層の真上にある地層」が、原発を建設した際に生じた単なる「盛り土」である可能性が否定できないなどとして、去年、現地調査を行いました。
 その結果、少なくとも観察をした敷地内の15の地点では盛り土ではないことが確認されたほか、規制委員会の目視の調査でも、断層が真上の地層には影響を及ぼしていない、つまり、断層が活動したのは真上の地層が積もる前だと確認されました。それでも規制委員会は、それぞれの地層が異なるということを証明するために追加でデータを示すよう、北電に求めました。
 こうした確認を重ねた結果、2日の審査会合で正式に「活断層ではない」と結論づけられました。審査長期化の原因だった断層の評価が固まったことは、審査が大きく進展したことを意味します。
 北電は、審査会合の結果を受けて「ひとつのステップを乗り越えたと考えている。その他の課題も残っていることから、引き続き審査対応に総力を挙げ、適切に取り組んでまいりたい」とのコメントを発表しました。

【再稼働に向け 残る課題も多く】
 それでも再稼働に向けては、北電みずから「その他の課題が残っている」と認めるように、主要な項目の審査はなお続きます。
 原発の耐震設計の基準となる「基準地震動」の策定、最大の津波を想定した「基準津波」の策定、それに原発に影響をもたらす可能性のある「火山の影響評価」の3つが重要な審査項目です。
 この3項目について、2日の審査会合で北電は、規制委員会に対していつごろ説明をすることができるのか、見通しを示しました。
 このうち、「基準地震動」については、早期に見通しを示すことができるとしています。
 また、「基準津波」については、日本海の東縁部の地震で想定される津波の影響を中心に、8月下旬に開かれる審査会合で説明できるよう準備を進めているということです。
 さらに、「火山の影響評価」は、過去の噴火の規模を示す、敷地内の火山灰の層の厚さを中心に調べ、基準地震動や基準津波の審査が終わり次第、説明を行いたいという考えを示しました。
 規制委員会は、2日の会合でこうした残る審査項目を説明する詳しいスケジュールについて、次回の審査会合で示すよう北電に求めました。
 2日の判断をきっかけに、8年にわたって続く泊原発の審査のペースが上がり、再稼働に向けた道筋が見え始めるのかどうか。北電の対応がカギを握っています。

札幌放送局記者 臼杵良〔原子力問題担当〕
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