[2020_09_08_04]中間貯蔵「合格」 むつ−現状と課題(6) 劣化対策、性能維持が鍵 佐藤正知北大名誉教授に聞く 多分野の技術者が監視を(東奥日報2020年9月8日)
 
 リサイクル燃料貯蔵(RFS)の使用済み核燃料中間貯蔵施設について、1970年代末から高レベル放射性廃棄物の処分技術などを研究してきた佐藤正知・北海道大学名誉教授(71)=札幌市在住、2011年から県原子力政策懇話会委員=に話を聞いた。

 ー施設の安全性をどう見ているか。
 「欧米諸国をはじめ海外では既に金属キャスクを用いた乾式貯蔵が行われている。原発のように核分裂反応が進行する過程や、再処理工場のように金属製の被覆管をせん断し内部の燃料を溶解・分離・精製する工程を含む施設と比較すると『静的な施設』といえる。キャスクが損傷を受けない限り、懸念される事態の発生は考えにくい」
 「ただ、事故は想定を超えて起こる場合がある。定期的な測定・検査とともに、経年劣化対策や情報の収集・整理、人材育成への取り組みを含め、安全確保に実践的に向き合う体制を一段と整えて、訓練を通じて地元の安全安心の醸成に向け取り組むことが必要」

 ー安全対策の鍵となる部分は。
 「(1棟目の)施設は最大288基のキャスクに3千トンに達する大量の燃料を貯蔵し、また、期間が最長50年に及ぶ。キャスクの強度や気密性が経年劣化することなく、遮蔽や除熱、臨界防止対策の面でも所定の性能を維持できるよう管理を続けることだ。熱・機械工学や放射線工学、核燃料工学など幅広い分野の技術者が目を光らせ、安全確保に柔軟に向き合う体制が重要と考える」 ー燃料は崩壊熱を持つ。
 「プールで7年程度冷却すると、崩壊による発熱率がある程度まで低下することから、維持管理と危機管理に優れた自然空冷式の乾式貯蔵が可能になる」
 「燃料を閉じ込める被覆管の健全性を維持する観点から、貯蔵期間を通じて被覆管を所定の温度以下に保つ必要がある。キャスクに用いられる金属ガスケット(強い密封性を持たせるための部材)、中性子遮蔽材であるレジンなども同様。腐食、構造強度など分野の異なる技術者が協力することが大切だ」

 −施設の役割、意義は。
 「日本は『リサイクル路線』を維持している。国際社会はブルトニウム保有量を増やさないよう強く求めているが、一般の原発でプルトニウムを燃やすプルサーマル発電、特に大間原発の運転が始まらない場合はMOX(プルトニウム・ウラン混合酸化物)燃料の形態でプルトニウムが蓄積することから、再処理を抑制して対応する事態も考えられる。中間貯蔵施設の導入は再処理工場の運転状況、また最終処分の遅れに対応して、燃料の貯蔵量を調節し核燃料サイクルを柔軟に管理する上で重要な役割を担う」

 ー燃料の搬出先は不透明だ。
 「操業40〜50年後の状況を現時点で見通すことは難しい。全国における原子力発電規模の今後の推移、MOX燃料の消費、プール貯蔵、再処理の実績、乾式中間貯蔵の推移を見ながら、いくつかのシナりオに分けて整理し、事態の推移を見ていく必要がある」
=終わり=
(この連載は加藤景子、工藤洋平、佐々木大輔が担当しました)

 <さとう・せいち 1949年生まれ。北海道大学大学院修了、理学博士。北大教授時の専門は原子力工学で、特に放射性廃棄物の処分に詳しい。近年は、原子力発電環境整備機構(NUMO)技術開発評価会議委員長、原子力規制委員会特定原子力施設放射性廃棄物規制検討会委員などを歴任>
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