[2020_10_09_10]高レベル処分場 2町村調査受け入れ 交付金で後押し、結実期待 国、事業膠着打開狙う Q&A 高レベル処分場 文献調査で20億円交付(東奥日報2020年10月9日)
 
 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定で8日、北海道の寿都町と神恵内村が策1段階となる文献調査に進む意向を相次いで表明した。過去1回応募があったものの撤回して以降、処分事業は長年膠着状態に。ごみがたまる一方の状況に強い危機感を覚える国側は、交付金の増額などあの手この手で自治体に働き掛けてきた。ようやくこぎ着けた2町村の調査受け入れを状況打開の突破口にしたい考えだ。

 「各社最低1カ所は処分場の候補地を出してほしい」
 数年前に開かれた大手電力でつくる電気事業連合会の担当者らを集めた会合で、経済産業省の職員はこう迫った。「事実上のノルマ。相当覚悟を決めて踏み込んできた」と、ある電力関係者は受け止めた。
 地下300メートルより深い岩盤に埋める「地層処分」の手続きを定めた最終処分法が2000年に施行されて以降、応募したのは07年の高知県東洋町だけ。町は同年、住民の強い反対で取り下げた。国は同年度から、約2年の文献調査期間中に支給する1年当たりの交付金額を約5倍の10億円に引き上げた。
 さらに17年には処分地の適否を示した科学的特性マップを公表して関心を促したほか、全国100以上の地域で「対話活動」と称する説明会を開催してきた。ただ、応募検討の動きこそあったものの、いずれも結実せず国は焦りを募らせた。
 背景には、1995年から日本原燃の施設(六.ケ所村)に随時運び入れている核のごみの貯蔵期限がある。核のごみはガラスで固化した状態で現在約2500本存在し、うち2176本がこの施設で一時保管されている。
 県と村は日本原燃との協定で搬入から30〜50年で各電力会社に搬出させると約束しており、95年に搬入されたものは2045年に期限を迎える。さらに各地の原発などにある使用済み燃料約1万9千トンを再処理すれば、さらにごみが出て合計で約2万6千本となる。 文献調査から処分場の操業開始まで約30年かかり、寿都町などで調査が始まっても50年まではごみを処分できない計算。貯蔵期限が切れた後の搬出先は決まっておらず、処分事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)は「前倒しできるかもしれないが、結構差し迫っている」と明かす。
 こうした中での神恵内村と寿都町の調査受け入れ表明を、国とNUMOは膠着状態を打破するきっかけになると、もろ手を挙げて歓迎する。鈴木直道道知事は、知事が意見を述べることができる第2段階の概要調査移行時には反対する意向を表明しているが、NUMOの担当者は「仮に文献調査だけでも理解の促進やノウハウの蓄積ができ、非常に有意義」と語る。
 最終処分地が既に決まり、建設が始まっているフィンランドでは十数の自治体が手を挙げて絞り込まれていった経緯がある。経産省のある幹部は「国内でももう少し各地の自治体に手を挙げてもらって、同じような流れになってほしい」と期待を示した。

 調査で20億円交付 Q&A 高レベル処分場 

 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定を巡り、北海道の寿都町と神恵内村が文献調査に進む方向となりました。
 Q 核のごみとは。
 A 原発の使用済み核燃料を再処理(化学処理)すると、まだ利用できるウランやプルトニウムが取り出されます。その過程で出た廃液をガラスと混ぜて固化体にし、ステンレス製容器に入れた物が「核のごみ」です。非常に強い放射線を出すため遮蔽しながら六ヶ所村などの施設で保管しています。
 Q 最終処分って何?
 A 核のごみを最終的に捨てる方法です。ステンレス容器を厚さ約20センチの別の容器に入れ、厚さ約70センチの粘土で覆った上で、地下300メートルより深い岩盤に埋めます。放射線量が十分に下がるまで数万年以上、人間の生活環境から遠ざける計画で「地層処分」ど呼ばれます。
 Q 文献調査とは。
 A 処分場所を決める際、地震や火山活動などの影響を受けないことを確認するため、3段階で絞り込みます。その第1段階が文献調査で、約2年間、地質図や論文で活断層や土地の浸食状況などを確認します。
 Q その後は。
 A 第2段階の概要調査では約4年かけて、地面を掘るボーリング調査などを行い、最後の精密調査では、地下に施設を造って14年程度調査を続けます。国は次の段階に進む際には市町村長や知事の意見を聞き、反対されれば進まないとしています。
 Q これまでどんなことがあったの。
 A 国は2000年に地層処分に関する法律を定め、02年から候補地を公募しました。07年に高知県東洋町が全国で初めて文献調査に応募しましたが、住民の反対を受けて撤回し、その後文献調査に進んだケースはありません。国は文献調査を受け入れた自治体に最大20億円を交付する仕組みを用意し、後押ししています。概要調査では最大70億円が交付される予定で、精密調査では金額は未定です。
 Q 他の国はどうしているの。
 A 地層処分は、原発を利用してきた多くの国で検討されています。処分場所が決まったのは、フィンランドとスウェーデンの北欧2カ国で、使用済み燃料を再処理せず、そのまま埋める方針です。米国やドイツでは、住民の反対や政府の方針転換があ出撃肌しています。

 核ごみ対応の推移

1995年 六ヶ所村の日本原燃施設に搬入開始
2000年 最終処分法施工
2007年 高知県東洋町が応募するも取り下げ。国は文献調査期間中の1年当たりの交付金を約5倍の10億円に引き上げ
2017年 国が処分地の適否を示す科学的特性マップを公表
2020年10月 北海道寿都町と神恵内村が調査受け入れ表明
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