[2022_11_03_05]運転制限撤廃 老朽原発 安全どう確保 推進側、”門戸開放″に期待(東奥日報2022年11月3日)
 原発の運転期間を最長60年に制限するルールを撤廃する政府方針を受け、原子力規制委員会は長期運転の安全を確保する規制見直しの議論を本格化させた。60年制限によって廃炉が相次ぎ、衰退に追い込まれた原発推進側は門戸開放″に期待をかける。一方で規制委は「現行よりはるかに厳しい規制になる」と強調。老朽原発をいつまで動かし続けることになるのか、まだ見通せない。
 現行制度では40年を超えて原発を運転する場合、電力会社は「特別点検」を実施し、規制委の審査に合格しなければならない。それでも延長期闇は最長20年までだ。
 特別点検は核燃料が入っている原子炉圧力容器の溶接部を超音波で細かく確認するほか、コンクリート構造物の一部をくりぬいて強度を調べる大がかりな作業となる。
 東京工業大の奈良林直特任教授(原子炉工学)は「圧力容器は原発の心臓。核分裂で生じる中性子による劣化は確認しないといけない。一方で原発の頭脳となる中央制御室の制御盤や、大型機器の蒸気発生器などは交換する必要がある」と説明する。圧力容器を交換した例はないが「米国のような80年運転が見えたら、交換に踏み切る電力会社が出てくるかもしれない」と読む。
 40年超え運転に加え、東京電力福島第1原発事故を教訓とした新規制基準に適合するための工事には多額の費用がかかる。このため「60年まで残り20年運転しても割に合わない」と小型の老朽原発の廃炉が相次いだ。これまで40年超え運転が認められたのは関西電力美浜3号機、高浜1、2号機(いずれも福井県)、日本原子力発電東海第2(茨城県)の計4基で、運転したのは美浜3号機のみ。
 しかし老朽原発の淘汰が済んだ今後は、40年超え運転が常態化するのは必至。2024年以降に40年を迎える九州電力川内1、2号機(鹿児島県)も今年10月に審査申請したばかり。60年超え運転が実現すれば「投資した費用を回収できる」(奈良林氏)。
 原発の運転期間見直しの議論は今年8月以降に急速に進んだ。しかし原発の地元からは、政府の進め方に不満の声も上がる。廃炉作業中を含め原発15基が立地する福井県で、高浜原発の地元を地盤とする田中宏典県議(自民)は「新たな原発を建設しなければ、安全の維持に必要な技術の継承や研究開発がされなくなる」と指摘。新型炉なら安全性向上も期待できる。「新増設できるまで運転延長するなら分かるが、先に延長の議論が出るのは疑問だ」と訴える。
 海外ではどうか。日本原子力産業協会によると、今年1月1日時点で世界の原発431基のうち107基が40年以上運転しており、「最年長」はインドのタラプール原発1、2号機の52年2カ月。米国では80年運転が認められた原発があり、100年運転も議論されている。英国やフランスでは運転期間に上限はなく、10年ごとに審査を受ける。推進側はこうした状況を根拠に運転期間見直しを主張してきた。
 しかし規制委の更田豊志前委員長は「地震一つ取っても(海外と日本は)状況が全然違う。直接参考にはならない」と安易な追従に否定的だ。
 杉山智之委員も11月2日の会合で「古い原発ほど合格しづらいようなメカニズムを入れないといけない」と、厳しい規制を堅持する方針を強調した。
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