[2022_11_07_01]「老朽原発は危険すぎる」 エネルギー政策の第一人者が川内原発40年超運転に疑問「新設の方がよっぽどいい」(南日本新聞2022年11月7日)
 
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「老朽原発は危険すぎる」 エネルギー政策の第一人者が川内原発40年超運転に疑問「新設の方がよっぽどいい」

 九州電力が10月中旬、川内原発1.2号機(鹿児島県薩摩川内市)の運転期間延長を申請した。国では原発の新増設やリプレース(建て替え)、60年超運転の検討が本格化。2011年の福島第1原発事故以降、脱原発に向かった原子力政策は揺れ戻しの兆しを見せる。エネルギー政策の第一人者で国際大学副学長の橘川武郎さん(エネルギー産業論)に、見通しを聞いた。

 −延長申請時、九電の記者会見に池辺和弘社長や担当役員の姿はなかった。
 「節目なだけに、経営者が説明すべきだった。地元説明も直前で、用意周到な九電らしくない。九電は原発の稼働率が高く、福島の事故以降、再稼働や特定重大事故等対処施設の整備も全国で最も早かった。こと原子力に関して“優等生”だった。一連の対応は、延長申請は大した問題ではないとのメッセージが込められていたのかもしれない」 

 −原子力規制委員会に認可されれば、40年を超えた1.2号機が稼働する。
 「福島第1原発1号機の事故も稼働から40年だった。老朽化した原発は危険すぎる。新設した方がよっぽどいい。九電がどうしても原発を動かすなら、1.2号機を廃炉にして、最新の加圧水型軽水炉の3号機増設を打ち出すべきだ」 

 −九電に求めるのは。
 「これからは再生可能エネルギーの時代だ。幸い九州や鹿児島は、洋上風力をはじめ再エネの適地。国内の電力供給基地を目指してもいい。余剰電力については、本州への送電線を新設したり、温水をつくって熱源利用したりとさまざまな使い道を考えてほしい」

 −国が原発の新増設や60年超運転の議論を始めた。
 「福島の反省が生かされていない。第6次エネルギー基本計画でうたう『可能な限り原発依存度の低減』を本気で目指す気があるのか、不透明だ。一貫した戦略もない。新増設やリプレースは、本来なら採算性を考えたメーカーや電力会社など業界から出てくる話。今回は国が主導している。具体的に誰が、どこに、どのような原発を造るのか、はっきりしない。実現性を含めて冷ややかに見ている」
 「ウクライナで原発が軍事標的となり、施設を守ることの限界があらわになった。世界的に原発の安全性について、真剣に考えるべき時機が来ている。国民を交えた議論が必要だ」

 【略歴】きっかわ・たけお 1951年、和歌山県出身。東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。東京大、一橋大教授を経て国際大学(新潟県)国際経営学研究科教授に就き、2021年から副学長。国の総合資源エネルギー調査会委員などを務める。
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