[2007_03_31_01]原発 不適切事例97件 各社公表 東電も臨界隠し(朝日新聞2007年3月31日)
 
 全国の12電力会社は30日、発電所におけるデータ改ざんやトラブル隠しに関する調査報告書を経済産業省原子力安全・保安院に提出し、不適切事例4518件を報告した。うち原発関連は7社で97件あった。東京電力は福島第一原発3号機(福島県)で78年に起きた制御棒脱落は臨界事故に至っており、それを隠していたと断定。同2号機で84年に起きた原子炉緊急停止も隠していたと報告した。
 調査対象は原子力、火力、水力の約1400発電所。不適切事例の内訳は原子力97件、火力148件、水力4273件。看板設置などで河川法に基づく届け出を怠った事例約3500件を含めた東電が突出するなど、集計の基準などが一棟でないため、件数は会社により大きく違っている。
 福島第一原発3号機の78年の事故は、運転員が制御棒の脱落に気づかず、臨界状態と判断できないまま7時間半も放置した末に、記録を改ざん、事故を隠していた。しかし、原子炉メーカーの東芝に残されていた手書きのメモなどを分析した結果、臨界に達していたと断定した。
 福島第一原発2号機では84年10月、原子炉起動時に緊急停止装置が働いたが、運転員が記録を改ざんして国や地元に報告せず、原子炉等規制法違反の疑いがある。
 運転員の想定より速く核分裂反応が進み、数秒間臨界状態になった。当時、原子炉格納容器内では約100人が作業していた。基準を上回る被曝はなかったが、東電は「格納容器内で作業中なのに、臨界に達してしまったのは不適切だった」としている。
 北陸電力は、志賀原発1号機(石川県)の臨界事故隠しは当時の発電所長の指示だったとした。2カ月後に迫っていた志賀2号機着工への悪影響を恐れたという。本店は関与しておらず、同時に二つの点検作業をしたのが原因の一つだったとした。
 制御棒脱落は志賀原発1号機をはじめ、東電、東北電力や中部電力など計10基の原発で起きていたことが判明。最初の福島第一原発3号機の臨界事故で情報が共有されていれば、続発は防げた可能性がある。
 日本原電は敦賀原発(福井県)2号機で97年の原子炉格納容器の気密試験で国の検査をごまかした問題について、不正の実行者や指示者は判明しなかったと報告、調査の限界を示した。
 一連の不祥事を受け、東電は同日、勝俣恒久社長ら64人を減給などとする処分を発表した。勝俣社長と田村滋美会長が3カ月間10分の3の減給、林喬副社長ら3人が3カ月間100分の15の減給など。
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