[2007_07_19_08]多数の損傷 関係者に衝撃 想定超す揺れ4回目(毎日新聞2007年7月19日)
 柏崎刈羽原発に53件のトラブルが発生したことは、原発が大地震に多数の弱点を抱えていることを浮かび上がらせた。地震直後に緊急停止して大事故は免れたが、各所で損傷が発生し、関係者に衝撃を与えている。
 7件と最も多いトラブルは、使用済み燃料プールから放射能を帯びた水がこぼれたケースだ。同原発1〜7号機すべてで起き、6号機では海に約1・2立方bが放出された。放射能は微量で環境への影響はなかったが、原子力資料情報室の西尾漠・共同代表は「プールから水があふれることは、過去に起きているが、海にまで漏れ出したのは例がない。環境中へは漏れない仕阻みのはずで大問題だ」と話す。
 西尾さんがさらに重視するのは、インフラの被害も目立つことだ。構内道路の一部が寸断され。飲料水タンクからは水が漏れ出して空になった。西尾さんは「一つ一つのトラブルは軽微かもしれないが、国への報告の遅れを含め、その後の対応がひどい。これでは、本当に重大な事故が発生した時には事実上、対処できなくなるのではないか」と不安を隠さない。
 また、国内外の原発事故を調べている増田善信・元日本学術会議会員は「原発は、非常に複雑なシステムで成り立ち、配管が張り巡らされている。今回の地震で生じた配管のひびなどをすべて見つけ修復することは不可能に近いだろう。そこが弱点となって、次に同規模の地震が起きたら耐えられなくなるかもしれない。緊急使用停止命令は、住民の安全を考慮すれば当然の判断だ」と話している。【田中泰義】

 想定超す揺れ4回目

 各地にある他の原発は安全なのか。国の「原子炉立地審査指針」は冒頭で、原発を設置する場所の条件として、「大きな事故の誘因となるような事象が過去になかったことはもちろん、将来も考えられないこと」を挙げる。もちろん、大地震も「事象」の一つだ。
 しかし、世界有数の地震国・日本で、大地震の恐れが全くない地域はない。このため、国は原発の耐震指針で、それぞれの原発がある場所で想定される最大の地震にも耐えられる設計をすることを求めている。その結果、マグニチュード(M)8クラスの巨大地震・東海地震の想定震源域の真上にも、中部電力浜岡原発が作られている。
 国や電力会社は、想定する地震について、「およそ現実的ではない地震」と説明してきた。しかも、各原発は、それに余裕を持って耐える設計をしてきたはずだ。ところが、今回の地震では、想定の約2・5倍もの揺れが原発を襲った。
 原発が想定を超える揺れに襲われたのは今回が初めてではない。東北電力女川原発では03年5月の三陸南地震と05年8月の宮城県沖の地震の2回経験し、北陸電力志賀原発も今年3月の能登半島地震で想定を上回る揺れを観測した。
 想定の基になる活断層調査などの甘さは、他の原発でも指摘されている。他の原発も想定外の地震に襲われる可能性があることは否定できないのが現状だ。【鯨岡秀紀】
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