[2011_10_25_03]若狭湾津波調査開始 1万年前地層まで掘削 原発3事業者 1年かけ分析 地震想定 見直し進まず(福井新聞2011年10月25日)
 関西電力、日本原電、日本原子力研究開発機構は24日、原発14基が立地する若狭湾沿岸で過去の大津波の痕跡を調べるためのボーリング調査を若狭町山の中山湿地で始めた。美浜、若狭両町にまたがる三方五湖と周辺の計9地点で、約1万年前の地層まで掘削して堆積物を採取する。分析結果によっては原発の津波対策の見直しを迫られる可能性もある。       (竹内史幸)

 3事業者は従来、過去の文献などから若狭湾沿岸で大規模な津波が発生する可能性は低いとしてきた。ところが、戦国時代などの文献に大津波被害の記述があると判明。中央防災会議や県原子力安全専門委員会は過去の津波の規模などを調べて対応すべきだと指摘しており、合同での調査を決めた。
 ボーリング調査は、深さ約10〜30メートルまで掘削。久々子湖と管湖の湖底や、周辺陸地の地層から採取した士などを約1年かけて分析し、津波の有無や年代を調べる。
 この日は、文化財保護法などに基づく県と町の許可がいち早く下りた中山湿地で、担当の日本原電がボーリング調査を開始した。国道27号から近く、調査地点のうち最も南側で海抜19メートルの地点。
 地上約6メートルの高さのやぐらを組み、作業員が専用の機械を使って堀削を始めた。直径7センチ、長さ1・2メートルのステンレス製の円筒に、まず深さ1メートルまでの堆積物を数分間で収めた。この作業を1メートルごとに深さ約30メートルまで繰り返すという。
 今後は、準備が整った地点で、担当する事業者が順次調査を行う。
 日本原電開発計画室の北川陽一副室長は「若狭湾で大きな津波はなかったという認識だが、伝聞や伝承もあり、今回の調査で科学的な情報を蓄積する必要がある」と説明。新たな知見が得られれば、津波の評価と対策に反映させたいとした。
 県内の原発14基の津波の高さの想定はこれまで最高で1・9〜5・2メートルだった。東京電力福島第1原発事故を踏まえ、それぞれ想定を9・5メートル引き上げて対応する方針を決め、防潮提の建設や防波提のかさ上げが計画されている。

 各地の原発では東日本大震災が起きる前から、「想定外」の揺れを記録する地震が相次いでいた。電力会社は「重要な機器に影響はない」と釈明する一方で、そのつど想定を引き上げるなど後手後事の対応に終始し、経済産業省原子力安全・保安院も追認してきた。
 女川原発では05年8月に宮城県沖で発生したM7・2の地震で、原発直下の岩盤の揺れの強さが「設計用限界地震動」を上回った。設計用限界地靂は旧耐震指針に基づいて設計時に想定する「およそ現実的でない」とされる大地震で、限界地震動を超えた初めての事例だった。
 耐震指針改定後の07年3月に発生した能登半島地震(M6・9)では、志賀原発2号機でも揺れが限界地震動の2倍近くに達した。その約4カ月後に発生した新潟県中越沖地震でも、柏崎刈羽原発の7基全てで、旧耐震指針下で想定した限界地震動を超えた。直下の岩盤では最大1699ガル(ガルは加速度)に達し、想定の約3・8倍となった。
 そして東日本大震災では、事故を起こした福島第1原発のほか、女川原発と東海第2原発で、新指針に基づいて想定した最大の揺れを初めて上回る事態となった。女川原発では3月11日の本震(M9・0)だけでなく、宮城県沖を震源とする4月の余震(M7・1)でも揺れが想定を超えた。
 今や新指針すら妥当性が揺らいでいるが、地震の想定手法の見直しについての貝体的議論は始まっていない。
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