[2021_06_22_05]社説:老朽原発再稼働 コロナ禍にリスク大だ(京都新聞2021年6月22日)
 
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社説:老朽原発再稼働 コロナ禍にリスク大だ

 新型コロナウイルス禍で原発事故が起きたら、どう避難すればいいのか。
 関西電力は、運転開始から40年を超えた美浜原発3号機(福井県美浜町)を、あす23日に再稼働させる予定だ。
 共同通信が、美浜、高浜原発の30キロ圏内にある福井、京都、滋賀、岐阜の4府県19市町にアンケートした結果から、新たな懸念が浮かんできた。
 コロナ禍での原発事故を想定して住民避難訓練を実施したのは、わずか4市町。義務付けされている避難計画を見直したのは、10市町とほぼ半数にとどまっている。
 市町の中には、感染が拡大しては元も子もないと住民参加の避難訓練を控えたところもある。
 政府は昨年11月に感染症流行下での指針を示し、自治体に避難計画の見直しを求めた。しかし、現場の窮状を分かっているのか。ただでさえ市町はコロナ対応やワクチン接種で多忙を極めている。事故時の避難対策と感染対策を、同時に進めるのは現実には難しい。
 これまでの避難計画に加え、感染拡大防止のために避難所での検温、換気、間仕切りが求められる。避難住民の健康状態に目を配り、感染者用の空間や医療・介護スタッフも備えねばならない。
 避難所の設営に、より多くの人員や時間が必要になる。密を避けるため避難所や移動バスを増やすことも検討しないといけない。
 専門家は、住民のコロナ不安を軽減するため避難計画の見直しを急ぎ、周知する必要があると指摘するが、今の自治体には負担が大きい。政府が主導し実効性のある避難対策を整備すべきだ。
 美浜3号機の再稼働は、福島第1原発事故後のルール「原則40年、最長で延長20年」の初事例となる。原子力規制委員会の審査に合格したとはいえ、原子炉中枢部の劣化を診断する技術は確立されていない。10年間も停止していただけに事故の懸念は消えない。
 コロナ禍に安全な避難ができないとして、福井などの住民が運転差し止めを求めたが、大阪地裁は3月に却下した。ただ、避難については判断を示していない。
 東海第2原発(茨城県)の運転差し止め訴訟では、水戸地裁が実現可能な避難計画がないとして運転を認めない判決を下している。
 コロナ禍に対応した避難計画の見直しは進んでおらず、避難による感染のリスクや不安が解消されていない以上、美浜3号機の再稼働は見合わせるべきだ。
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